『天使の翼』第12章(5)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
窪地の縁の少し手前まで来て、遥か遠く万年雪を頂いた連山が視界に入ってきた。記憶通り。
風の音しか聞こえない。
わたしは、思い切って縁の上に頭半分目から上だけ出した。
…………
一つだけ、墜落前の記憶と違う。
50メートルほど先に、かなり大きな湖が広がっている。波が立っているのか、連山の上の太陽の光がまばゆく乱反射している。
わたしは身を乗り出した。
――逆光の中、湖岸からさほど遠くない湖面に、SSIPのパトロール・エアカーと思しい物体が……窓の高さまで半分湖水に浸かった状態だ……浮いているのか、着底しているのか、ここからは分からない……