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『天使の翼』第11章(112)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
わたし達の指揮官機は、辛くも断崖の上まで浮上することができた。
だが、その直後、急速に車体を傾けると、どこまでも続く岩場――山上は、遥か遠く陽の光に白く輝く連山を望む、岩だらけの平原だった――に向け、斜めに突っ込んでいった。さっきまでの雲行きが嘘のような快晴の空の下、地上に激突するまでの時間は、不思議ととても長く感じられた。
わたしの頭の中で、普段なら作らないような妙な歌が渦巻いた――気絶するまで……恐らく気を失った後も……
巨大な鳥の影が、太陽の顔を隠す
その羽が大気を打つ度に
不安の波が見る者の心に打ち寄せる
その羽ばたきは、大気を震わせて轟く
ついに、わたしの心の中の殻が割れた!
無数の記憶の断片が、
爆弾の爆発したみたいに飛び出してくる
わたしは、それを茫然と見守る
忘れていた記憶――
押し殺していた記憶――
探していた記憶――
すぐそばにあったのに
気付かなかった記憶……
そこに、
何故か
つかみどころのない生き物の影が……
人間のようでいて
人間でない
水の滲むようにぼやけた輪郭……
かすれた影……
わたしは、もがくように目を凝らし、
話しかけようと……
いつまでも……
いつまでも……
(第11章 完)