『モノ消費』の逆襲~所有の復権~
日経電子版の記事【未来のクルマ続々 トヨタ、共有と所有の二正面作戦】は、記事の表現を借りるなら「シェアリング向けのクルマと、自分の好みに合わせて作り込むクルマを想定。それぞれ利用者を取り込む二正面作戦で臨む構え」のトヨタに関するリポートです。
そもそも、『モノ消費』から『コト消費』への変化が叫ばれる昨今ですが、もとより『モノ消費』、モノの所有が完全になくなってしまう、とは思えません。――例えば、個人が金融資産以外何ものも所有せず、企業があらゆるモノを所有し、消費者がそれをシェアリングするような社会です。例えば、住居が全て賃貸となって、家を購入する人がいなくなるようなことが起きるでしょうか?度重なる自然災害や、マンションなどの大規模修繕に向けた管理不全のリスクなどから、賃貸への回帰が起きるかも知れませんが、どちらかに100%転ぶ、という事は考えにくいです。――モノの所有にこだわる人の割合は一定の水準ないしはレンジで保たれるのではないでしょうか。
しかも、『コト消費』が進行することで、かえって所有という形態が増勢に転じる、という逆説すら考えられます。それは、記事でもふれられている『カスタマイゼーション』の潮流です。
体験を重視する『コト消費』の流れは、やがて、自分だけの体験を実現するモノ、自分の実現したい体験をもたらすモノを自ら創る『プロシューマー(生産消費者)』を生み出し、3Dプリンティングなどのテクノロジーの進化によって出来る事の幅が広がりつつある『カスタマイゼーション』や、消費者が積極的にプロダクトの開発に関与する『コ・クリエーション』が盛んになる事が予測できるのです。