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伝統製法 vs. テクノロジー

 日経電子版の記事【分子レベルで高級品を再現 人工ウイスキーの実力は?】は、古くて新しいテーマ『伝統製法 vs. テクノロジー』ということを改めて考えさせてくれます。


 「伝統製法で作られた、きわめて美味ながら、お値段も立派な商品、いわゆる高級品を、手頃な価格で再現できないか……」というのは、古今東西を問わず人々の共通の願望であったように思います。

 その為にはどうしたら良いか、方法として考えられるのは――

① 伝統製法を改良して(設備の変更・手順の変更・原材料の変更など)、
 価格を下げる。
② 全く違うアプローチで、伝統製法に匹敵するモノを作る。


 ①の『伝統製法の改良』は、大なり小なり、時代の流れと共にどんな業界でも起きてきていることだと思いますが、『製法』を変更することには、その企業のプライドと存続が掛かっており、『味』が変わらないという事が大前提となるはずです。

 時代と共に多少求めやすい価格になる事はあっても、(モノによりけりだと思いますが)価格の低減という事は、文字通り桁違いなもの、とはいかないのではないでしょうか。価格という事では、ブランドメーカーは、少しづつグレードを下げた商品も作る、という形で対応している面もあると思います。例えば、日本酒で、精米歩合を変えて作るような場合です。


 ②の『全く違うアプローチ』は、この記事でも取り上げられているように、近年テクノロジーの進歩と共に様々な手法が出てきているようです。完全な人工合成のようなものもあるかも知れませんが、あくまで自然由来の原材料にこだわったり、細胞培養のテクノロジーを使ったり、と実に様々です。

 この記事を読んで一番強く感じたことは、『高級品の再現』と言っても、決して完全に同じモノではない、という事です。テクノロジーの力で高級品に匹敵する味を作ろうという試みは、結局のところ、再現ではなく、全く新しい価値、モノを作り出しているのだと思います。

▶『伝統製法 vs. テクノロジー』のポイント
① テクノロジーの力で作り出したものは、新しいモノ、新しい価値
② テクノロジーの力で作った新しいモノが普及するには(=キャズムを
 越えるには)、消費者がその味に慣れ親しんで、安全性などに納得する
 必要がある。
③ 高級品の『美味』には、味そのものと、その味の作られた手間暇・伝統
 ・歴史といったもの(=ドラマ)も含まれており
、決して真似(再現)の
 できるものではなく、買う人も、それら全部を含んだ『美味』を求めて
 いる。

 


 

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