『天使の翼』第11章(73)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
列車は、グイグイと、制動をかけて、ついに、かなり急勾配な線路の上に静止した。獰猛な生き物が息を引き取るように、機関の切られる音がした。
わたしは、今頃になってようやく、SSIPのパトロール・エアカーが威嚇するような大音量のけたたましいサイレンを鳴らしていることに気付いた。
窓の外は、その地形のミクロ気象のなせる業か、緑少なく、ごつごつとした岩肌の露出した峠のような土地に差し掛かっていた……SSIPは、わたし達の列車を、最初からここへ追い込むつもりでいたのだ。昼前だからまだしも、これで暗かったり、霧が出ていたりしたならば、その恐怖感は倍加していたに違いない。
しばらくして、サイレンの音が一つ二つと止み、パトロール・エアカーは、どこかわたし達の窓からは見えない所へ着地した様子だった。あの台数だから、彼らの目的が何であるにせよ、誰一人逃さぬ布陣で、列車の先頭から最後尾にかけ分散して着地したと思われる。
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