『育つ』を阻む相対評価の落とし穴
この記事【「場を与えれば人は必ず育つ」 花王社長の人材育成論】は、私達の身の回りに溢れている『相対評価』の見過ごしにできない落とし穴について考えさせてくれます。
この記事は、『人の成長』は、『他の人によって育てられる』事によってもたらされるのではなく、『その人に与えられた場の中で自ら切磋琢磨する』事によってもたらされる、という考え方を根底に置いています。全く同感です。『人の成長』には、もちろん、『他の人によって育てられる』、他の人を見習う、という部分もあるでしょうが、もっと広く、その人の置かれた場という全体の中でもがきながら、あがきながら成長するというのが実態に即しています。つまり、『誰に教えさせるか』ではなくて、『どこで育てようか』という視点がきわめて重要なのです。
この観点で、この記事のフローを整理してみると――
▶人材育成のフロー① まず、その人がどんな人間か見る。 ⇓② その人のプラス面、ポテンシャルが見えてくる。 ⇓③ その人のポテンシャルが生かせる場を与える。 ⇓④ その人の成長が始まる。 ⇓⑤ 【相対評価】・・・✖・・・成長しても、その分がダイレクトに評価されない。 (成長した分が寄与して他の人の評価を抜かないと評価は上がらない。) (周りが同じように成長していくと、成長しているのに、なかなか評価が上がらない。) ⇓⑥ 成長に比例して評価が上がらないので、モチベーションが上がらない。 ⇓⑦ 人材育成=『個の活性化』が未達に終わる。 ⇓⑧ 【企業力極大化の方程式=個の力✖組織力✖トップの打ち出す方向性】が上向かない。 ⇓⑨ 企業は伸びない。▶絶対評価ならば・・・⑤ 【絶対評価】・・・◎・・・成長した分が、小さなことまで評価される。 ⇓⑥ モチベーションが上がり続ける。 ⇓⑦ 人材育成=『個の活性化』が伸長する。 ⇓⑧ 【企業力極大化の方程式=個の力✖組織力✖トップの打ち出す方向性】が上向く。 ⇓⑨ 企業が成長する。 ⇓⑩ 絶対評価の原資を稼げる。
企業に限らず、社会の様々な場面で採用されている『相対評価』が、本当にそのままで良いのか、『相対評価』の落とし穴、弊害を真剣に考える事が問われている、と感じました。
『相対評価』のシステムは、企業が考慮すべき4つの資本、心理資本・社会資本・人的資本・財務資本を毀損している恐れがあります。
▶企業が考慮すべき4つの資本●財務資本Financial Capital・・・いわゆる資本。資本主義社会における投資。●人的資本Human Capital・・・財務資本を生み出す人の能力。●社会資本Social Capital・・・人が学習し、その人を支援する場としての、社会的ネットワークにおける人間関係。人的資本を生み出す人間関係。●心理資本Psychological Capital(PsyCap)・・・変転する環境の中で、ポジティブな心理状態を持続可能とする要素。財務資本・人的資本・社会資本など、全てを生み出す源。個人にとっては、自身の生き方、生きがいに向かって前進するため、自分の能力を最大限に発揮するために必要な心理状態。企業にとっては、競争力を最大化するために、どうやってそのような心理状態を引き出すかという課題。 最後に挙げた、心理資本の、ポジティブな心理状態を持続可能にする要素とは――●自信・効力感Efficacy●楽観性Optimism●希望Hope・・・成功のイメージと、そのための具体的なプロセスのイメージ。●粘り強さ・再起力Resilience
(補足) 同様の事を別角度から指摘している記事【電子立国に幕、人事が足かせに 東芝メモリ売却完了】を本稿末尾に添付します。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO35033980V00C18A9000000?channel=DF130420167231
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31220790R30C18A5X11000/
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