『天使の翼』第11章(98)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「…………マウンテン・デビルの生息域は、ハイ・アンコーナよりさらに奥地の空白地帯で……吟遊詩人のお二人には紛らわしいかも知れませんが、空白地帯、無人地帯、山岳地帯、どれも同じで、たとえば、ただ『山岳地帯』と言えば、すなわちアンコーナ高原のことなのです……ともかく、マウンテン・デビルは、ちょうど森林限界を挟んだ岩だらけの山岳と緑豊かな谷間を棲み家としている……今回の事件の核心は、『デビルの精』に関わることです」
「密輸ですか?」
シャルルが誘導的な質問をした。
少佐はニヤリとして――
「そう来ると思いましたよ」
そう言って、ローラの方をちらと見る。
ここで少佐が得意になって色々しゃべれば、また一つ、サンス大公国の世情を知る機会を得ることになる……