4年生まで悲劇はなし - 『足もとの自然から始めよう』
「4年生まで悲劇はなし」
この言葉にどきっとしました。
これまで、僕がしてきたことは何だったのだろう。
世界が180°回転して、がらがらと崩れていくようでした。
大袈裟な書き方ですが、それくらい衝撃的なメッセージが『足もとの自然から始めよう』という本に書かれていました。
本書の副題には「子どもを自然嫌いにしたくない親と教師のために」と書かれています。
つまり、
「子どもを自然嫌いにしたくなければ、4年生までは悲劇はなし」
ということです。
なぜ自然嫌いが生まれるのか
いったいどういうことでしょうか?
本書によれば、小さな子どもに地球規模の危機的な問題を教えることは、その子を自然嫌いにしてしまうというのです。
現代の我々の、それとしては正しいかもしれない環境カリキュラムは、子ども達と自然をつなげるのではなく、引きはがすことになっていないか。
自然界が虐待される様を目の当たりにさせられ、子どもたちは関りを持ちたくないと思うようになっている。
子どもは、素直で、そして弱い生き物です。
怖いもの、危ないものに対しては、防衛本能として、耳をふさぎ、目を閉じ、自分には危害が及ばないよう距離を保とうとします。
遠い世界の恐ろしいお話
- 気候変動
- 海洋プラスチック
- オゾンホール
- 熱帯雨林の減少
- 大量絶滅
- 砂漠化…
どれも、子どもには遠い世界の怖すぎるお話です。
これを聞いた子どもが、この問題を解決しなくちゃ!と思うよりも前に、これらの問題から、すなわち自然から、距離を置きたくなるのもわかるような気がします。
自分自身を守るために。
悲劇の自然にであう前に
では、どうすればいいのでしょうか?
本書では、これら「恐ろしい自然」と子どもが出会う前に、もっと大切なことがあるといいます。
それは、身近な自然に愛情をもてるよう支援する、ということです。
つまり、「はるか遠く」の自然ではなく、「今、ここ」の自然にできるだけ多く接する。
そして、自然や環境という言葉を聞いて、破壊された森や追いやられた動物たちではなく、美しい小川や森や生き生きとした動物たちを想像して、うきうきした楽しい気持ちになる。
そんな風にして、自然に対する愛情が根付いていれば、自然の「恐ろしい」問題に接したときにも、怯むことなく、遠ざけることなく、大切な自然を守ろうという気持ちが湧いてくるというのです。
子ども達に忍び寄ろうとする、我々自身の環境活動的な志向にしっかり目を光らせて、いかにこれを阻止するか。これこそ私たちの大問題なのである。
子どもたちにもっと元気に、力強い大人になって欲しいと思うなら、地球を守れと言い聞かせる前に、まずは子ども達がこの大地を愛せるように彼らを支えることから始めよう。
そんなメッセージに心が震えました。
これまでの自分は、子どもにとって「利己的な環境活動家」ではなかっただろうか?
ちなみに、本書の邦訳は岸由二さんがされています。
岸さんは、鶴見川流域ネットワーク等の活動で、正に子ども達が自然と接し、自然に愛情を持つための支援活動をされています。
本書で、その活動の深く大切な意義がわかったように思います。