1月13日(土)鈴々舎美馬二ツ目昇進落語会(相模女子大学グリーンホール 大ホール)
司会:蝶花楼桃花・鈴々舎馬るこ・鈴々舎美馬・鈴々舎馬風 「口上」
桃花師は2回目の口上司会だそうだ。兄弟子の馬るこ師は美馬さんが桜美林大学在学中に「スカウト」した話を語る。その後、浅草演芸ホールに美馬さんが訪ねてくる。馬るこ師への入門志願だ。だが彼は「家庭の事情」から弟子にはできず、馬風師の弟子となる。また、彼女の前座時代のドジ話を紹介する。馬風師は小朝・一之輔・桃花の話を引き合いに出し、美馬さんに早く真打になってほしい思いをにじませる。馬風師の目のお元気なうちに真打昇進してもらいたいが…。この後、恒例の馬風ドミノ(笑)。手締めの音頭も馬風師が。
桃花「こうもり」
美馬さんの唯一の欠点は馬風師匠の弟子である事!
居酒屋を営む清蔵が、こうもりを助ける。そのこうもりが「あおいちゃん」という女の子に姿を変えて恩返しに来る。愛知県出身・在住の微笑亭さん太さんが春風亭小朝師のために書いた新作落語である。桃花師が演じる「あおいちゃん」が可愛らしい。「じゅるる」と言いながら口を拭うのが官能的だ。
馬るこ「ハングル寿限無」
馬るこ師の前座時代。鈴本演芸場で終演後に馬風師が出演者達を引き連れて1階の居酒屋に乗り込む話などをマクラに。
主人公が赤ん坊の名付けを頼みに来る。「寿限無〜」とやたら長い名前をつけるが、女房が韓流好きであることから、韓国語(のような)名前をつけられてしまう。北の国のアナウンサーのような抑揚で。そんな彼も大人になり、ホストクラブに入店する。
名前に入っている「桂銀淑」とか「焼肉にはガスより炭だ(スミダ)」というフレーズが楽しい。
一旦幕を閉め、暫くして再び開ける。板付きでの登場だ。
馬風「男の井戸端会議」
椅子に座ってはいるが、声は大きいし話しぶりは流暢。自らコロナに感染した話や毒蝮三太夫夫妻のエピソード、立川談志師の悪口(笑)など、馬風漫談のあいかわらずぶりが嬉しい。
美馬「文七元結」
二ツ目昇進の喜びと会へ来てくれたお客様への感謝の思いをマクラに乗せる。
大ネタ。ネタおろしだろうか?
左官(シャカン)の長兵衛が帰ると娘のお久がいない。女房が顛末を語るくだりで、お久が女房の実の娘ではない事が明かされる。
長兵衛はお久がいる、吉原の大店「佐野槌」へ向かう。女将から諭される。女将の慈愛深さは感じられるが、厳しさが足りない。
長兵衛が帰った後、お久は女将に願い出る。
私を店に出してください。
女将はそれを諭しながら、お久の出生の秘密を語る。美馬さんの工夫。「女目線」シリーズの林家つる子さんに刺激されたか?
長兵衛が身投げを止めるシーン。彼は文七を羽交い締めではなく、ビンタを食らわして止める。新鮮。
文七が店に戻り、主人と番頭事情を聞く場面の後はいきなり長兵衛と女房の喧嘩の場面に飛ぶ。主人と文七が家を出て、酒屋に長兵衛の家を尋ねる場面はカット。女将とお久の会話に時間を割いたためか?
長兵衛夫妻とお久の再会の後、主人の方からお久の婿に文七はどうかと願い出る。
美馬さんの門出に相応しいおめでたい一席。
終演後、彼女は、45分で演るつもりが1時間になってしまったという。何回も口演するうちにブラッシュアップ・洗練され、短くなってゆくだろう。暫くして、また聴きたい。
美しい馬は大地を蹴って草原を走り出した。めざす場所はそう遠くない。
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