9月26日(木)江戸落語を食べる会 第109回 林家つる子の「中村仲蔵」を味わう(歌舞伎座 3階 花篭ホール)
辰ぢろ やかん
つる子師もよく演るが、彼のとはちょっと違うようだ。
つる子 お菊の皿
彼女が師匠・林家正蔵のところに入門する時に知らなかった事がある。それは師匠が犬を飼っていた事。そして、つる子師は犬が大の苦手。ある日、師匠が愛犬・コロネと戯れているところへ帰ってきた前座時代の林家つる子。するとコロちゃんはあろうことか、つる子さんに喜んで飛びついて…。つる子さんの身にふりかかった災難をマクラに。
今日は気温が高かったが、夜はだいぶ涼しい。この噺も今夏は最後か?
お菊があらわれる場面ではお囃子(三味線:かよ 太鼓:辰ぢろ)も入って、おどろおどろしい。最初の登場シーンでは美しくも妖しいつる子師の表情・立居振舞にゾクッとする。やがて噂が噂を呼び、お菊が人気者になると芸がクサくなり、コミカルなつる子師があらわれる。笑いの中にも、林家つる子の美しさが際立つ一席。
ー仲入りー
つる子 中村仲蔵
『仮名手本忠臣蔵』において、中村仲蔵が割り当てられた役は「五段目」の斧定九郎一役のみ。仲蔵はクサる。そんな彼に女房のお岸は
中村仲蔵が演じる新しい斧定九郎が観たいよ
とはっぱをかける。
芝居に工夫をしたが、手応えがなく、しくじったと思い込んだ仲蔵。帰ってきて、「上方へ修業に行く」と言う主人に、彼女は、
行っておいで。ひと回り大きくなった中村仲蔵を観たいよ
とはなむけの言葉を贈る。
師匠に褒められ、帰ってきた旦那に女房は
当たり前だよ。あれだけ稽古してたのをアタシは見てたんだから
と言葉をかける。とことん亭主に寄り添う女房なのである。コーチングとは、相手の話に耳を傾け、相手を観察し、時には提案をしながら、相手の持っている答えを相手の内側から引き出す指導法である。女房お岸がやっていたのはコーチングそのものではないか。
「女目線シリーズ」とはまた違う女性像を林家つる子は想像し、創造した。