出版社に入って3年半
30代中盤まで大学院生をずっとやってきて
そのまま教授職でも目指すもんだと思ってたのに
突如、目覚めたかのように就活をし
苦労した末、見事出版社の編集者として就職ができた。
最初は単純作業のようなものばかりで
これが編集作業の基本になるのだが
割と自分でも社会人楽にできるんじゃないかと思っていた。
しかし、いざプロジェクトの責任ある仕事を任されたとき
プレッシャーと闘いながら一冊の本を仕上げていった。
そこで覚えたのはやはり進行管理とクライアントとの折衝能力だろう。
刊行物なので当然、原稿を書いてもらわないと、あるいは校正を間に合わせていただかないと困るわけだが、
何度も督促の連絡をし、うまく先方の要求を汲み取りながら何とか仕上げていった。
中には理不尽にキレてくる先方もいた。そのときはただ平謝りである。
そうやってうまくやり取りしながらスケジュール管理をしていかなければならない。
特に出版社だと執筆者がなかなか締め切りまでに書いてくれないことが往々としてある。
それをせっつく能力が必要だが、ただ横暴にせっついてもダメだ。
うまく脱稿してくれる、校正を終わらせてくれるように
促すことも必要である。
いわばナッジ的な能力が求められる気がする。
また、職場では気遣いする能力も試されている。
院生時代はほぼ個人プレーで他人に気遣いする機会なんてなかったが
社会人になってからはそういうところが求められるようになった。
正直、その辺の能力はまだ苦労している。
徐々に上司・先輩のやり方を見ながら覚えないといけないと思っている。
一方で、大学院生時代に培った能力も生かされている部分がある。
それは編集委員会の際の司会の能力だ。
これは上司もお墨付きで、どうやら会議の進行はとてもうまいらしい。
それというのも学会や研究会の総会などで
司会をさせられていたかもしれない。
結局は場数を踏んだかどうかである。
以上のスキルはいずれも経験してみないとわからない。
初めてだと不安が多いがやはり何事も経験してみないと何とも言えない。
出版社だと特に人文社会系の学生・院生は憧れるようなので
ちょくちょくどうしたら入れるのか、どんな仕事なのかと聞かれることがある。
まあこちらとしては別にたまたま募集が出てたから
うまく引っかかっただけで
入るのに攻略法だの裏技だのみたいなことは何もないのだが
業界に関わりたかったら
とにかくバイトでも何でもいいから関わってみることをオススメする
また、大学院生だったら所属研究室の紀要雑誌などで
編集をやる機会もあるだろうからそういうのをやってみるといい。
とにかく編集者は楽しいぞ、と僕は言いたい。
編集から事務的な能力までいろんなスキルを身につけられるし
本との向き合い方が変わってくるかもしれない。
本が好きだったらこの仕事は天職のようなものですね。