斬新なのになつかしい。かばん屋から転身したタイ料理店
「こんな、食材の組み合わせってありなんや!」
食に保守的なタイ人が、こぞって通う革新的なタイ料理店があると聞いて、友人と行ってみた。
5年前に一号店がオープンしてから、口コミで広まった人気は、衰えしらず。今や、バンコク市内に8店舗をかまえる。
アメリカや日本からも声がかかっている勢いのある店だ。
その店の名前は、Phed Phed
タイ語で、辛いを意味する。その名のとおり、スパイシーな東北料理(イサーン料理)が売りである。
東北料理は、タイ料理の中でも、個性が際立っていて、融通がきないイメージがわたしにはある。
そんな料理が一体どのようにアレンジされているのか、興味深々であった。
その組み合わせアリ?
エアコンがばっちり効いたモールの一角にその店はある。東北料理の店は、だいたい屋台であることが多いので、モールの中にあること自体、珍しい。
昼時を過ぎていたため、すんなり注文することはできたものの、それでも30分待ちの人気店。
待っている間にどんなメニューがあるのか、チェックしてみることに。
メニューの数が多いのにも驚いたが、その食材の組み合わせに度肝を抜かれた。
一番びっくりしたのは、イチゴのソムタム。
ソムタムとは、青いパパイヤをナンプラー、パームシュガー、ライムや唐辛子で味付けした辛くて、酸っぱい東北地方のソウルフード。タイ人ならみんな大好きな定番メニューだ。
そこに、甘くておいしいイチゴをぶちこむなんて、イカれてると思ってしまった。
それだけでなく、スイカのソムタム、ポークチョップのナムトックなど、今まで見たことのない食材の組み合わせオンパレード。
わたしは、ついつい奇をてらったメニューが話題になっているだけの店ではないか、と疑った。
続々とあらわれる意外な組み合わせ
残念ながら、イチゴとスイカのソムタムは、売り切れだったため別のメニューを注文した。
オーダーしたメニューはどれも、これまで口にしてきたタイ料理とは一線を画していた。
どれもこれも、そういう食べ方は、しないだろうというものばかり。
単品で食べるメニューが組み合わさって、あらたな1つの料理になっている。
例えば、
・おつまみに食べるポークジャーキーを
・昼ごはんに食べるチャーハンにまぜて
・焼き鳥につけるソースをかけて食べる
ひとつひとつの味は、慣れ親しんだ味である。しかし、それを組み合わせることによって、一段とうまさが増している。
食べてみてわかったのは、闇雲にミックスしたわけでなく、うまさの相乗効果を狙った組み合わせなのだ。
オーダーしたほかのメニューも、普段決して交わらない食材の融合。ヌードルとソムタムの組み合わせた一品もうまかった。
インスピレーションは幼少期の記憶
どれも、意外な組み合わせだが、しっかりおいしい。それに食に関して保守的なタイ人からの評判もいい。
うちに帰ってから、YouTubeで、オーナーのトムさんのインタビューを聞いてなぜおいしいのか納得した。
東北部出身のトムさんは、元々、アーリー近辺で鞄屋を営んでいた。ある日、まかないを知人が食べたところ、あまりにもおいしくて、評判になったのがはじまり。
幼少期におかあさんが作ってくれた食事やおやつが、メニューのヒントになっている。
スイカのソムタムは、畑仕事の休憩中に食べていたおやつが起源にある。あざ道にゴザを敷いて、もぎたてのスイカを切り分ける。そこに、ナンプラーやプララー(醗酵させた魚のソース)、唐辛子や砂糖をまぶしてよく食べていた、と。
その他のメニューも、あまった食材でつくるチャーハンやおかずなど、お店の料理とは一味も二味もちがう家庭のレシピからヒントを得ている。
幼い頃に食べたものと、みんなが好きな食材をかけ合わせることにも挑戦しているトムさん。
イチゴのソムタムも、試してみたらおいしかったので、メニューを加えた。ただし、店に出す前に、40〜50回ほど試食をする。自信作しか店頭には並ばないのである。
全くあたらしいものであれば、タイ人はなかなか受け付けないだろう。
それは、わたしたち日本人とておなじこと。
しかし、この店の料理には、斬新さの中に、慣れ親しんだ味と、幼少期の懐かしい香りがにじみでている。
懐かしさと新しさ。Phed Phedがタイ人をひきつける魅力なのかもしれない。
お店情報
わたしたちが訪れたのは、セントラルチットロムのフードコートにある" Phed Phed Pop "
Phed Phed とは、タイ語で「辛い〜🔥」という意味。その名のとおり、スパイシーな東北地方の料理が名物。辛くないメニューもあるので、店頭にいるコンシェルジュにきいてみよう。
店舗は、全部で8店舗。店によってメニューがことなるのもたのしい。イチゴやスイカのソムタムは、セントラルチットロム店で、注文できる。
お昼時は、1時間ほど待たないといけないが、時間をずらせば、すんなりと注文できる。
新たなタイ料理体験をしたい方には、ぜひおすすめ。