えびはらあつし

メーカーのプロダクトマネジャー | タイ在住10年→マレーシア3年目 | 日々の食事から垣間見えるアジアと日本の食文化、体験したこと、気づいたことを書いています

えびはらあつし

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マガジン

  • Suger & Spice - フードエッセイ

    日々、繰り返される食事は、異文化との接点のはじまり。食事やそれを取り巻く環境ひとつ、ひとつに、実は、智慧や文化、歴史が詰まっていることに気づいた時、当たり前に口にしていたものを見る目がかわりました。日々の食事と体験、そしてそこから得た気づきを書き綴っています

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住みはじめた場所が好きになる瞬間

なかなか好きになれなかったクアラルンプール「やっぱり、なんだかんだバンコクの方がええよな」 妻と話をするたびに、口をついて出てくるのは、8年も住んだバンコクのことばかりだった クアラルンプールに住み始めて、もうすぐ8ヶ月が経とうとしている。仕事も、生活も慣れてきたものの、慣れ親しんだバンコクに、未だに心が奪われつづけている。はやく、クアラルンプールに馴染みたいと思えば思うほど、バンコクが私の気持ちを離してはくれない バンコク生活との比較がとまらない留学もしていたこともあ

    • 味噌汁さえあれば、世界のどこにいても生きていけると確信した日

      「味噌汁って、なんでこんなに、胃腸が落ち着いて、心にしみわたるんやろうか」 その日、わたしは身も心も、ずたぼろだった。10月は出張が多くて疲労困憊。大阪にはじまり、バンコク、ホーチミン、そして、ジャカルタと目が廻る ジャカルタから、クアラルンプール市内にある自宅に到着した瞬間、肩から力抜けた。すぐにでもベッドに倒れこみそうになった。しかし、おなかもすいた。 なにか、体と心が落ちくつものを口にしたい 冷蔵庫をあけてみると豆腐がある。日本のものとは少し違うけれど、中華系がよ

      • 味覚で世界を知る。あたらしい味から広まる深まる世界

        「さっちゃん、うどん食べれるようになったんやね」 鰹と昆布のお出汁の香りが漂う近所のおうどん屋さん。一時帰国の際、妹夫婦と3歳になったばかりのさっちゃんと訪れた さっちゃんは、子ども用の器に入ったきつねうどんをペロリと平らげた。半年前は、うどんを一口も食べなかったから驚きである うどんを、うまそうに食べるさっちゃんを見ながら、苦手だったタイ料理を克服できた瞬間を思い出していた 味覚の発達とその不思議味覚はどうやって発達していくのだろうか?とふと頭に浮かんだ さっそく

        • 清々しい最期を迎えるために。今できること

          無限に流れてくるXの投稿。その中で目が奪われたのは、タゴールの詩だった これまで、死を意識することはなかった。しかし、ある出来事がきっかけで、最期の瞬間を意識することになった 果たして、私は、どんな終末を迎えたいのか?そのために今できることはなんだろうか? 先日、デング熱を患った。熱帯特有の蚊から感染する風土病である。別名、break-bone fever と呼ばれるほど、高熱と骨に激痛が走る病である。2回目以降は、適切な処置をしなければ、死に至ることもある恐ろしい病だ

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        • Suger & Spice - フードエッセイ
          15本

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          私たちは、なんのために食べるのか?インドのカレーから学んだこと

          ほんのりとスパイスの香りが漂う食堂 わたしは、さつま芋のカレーとチャパティを目の前にして座っている お腹を空かせたわたしは、ゴクンと唾をのみこんで、日々の食事のあり方について考えていた ここはインド、リシケシにあるヨーガニケタンのアシュラム、すなわちヨガの道場 私は、定期的にここにやってきて1週間ほど滞在する。目的は、日々の暮らしの見直し、そしてカレーである 栄養と消化優先。アシュラムの食事アシュラムの1日は、鐘の音とともに、はじまる。眠気眼を擦りながら、朝6時から

          私たちは、なんのために食べるのか?インドのカレーから学んだこと

          大嫌いなはずだったタイランド

          こんな国、2度とくるもんか。 飛行機の窓から見えるバンコク市内の景色を眺めながら、わたしは、強く確信した。 トランジットで2日間立ち寄っただけなのに、史上最悪の印象をわたしに植えつけたバンコク。はやく立ち去りたくて仕方がなかった。 大学一年生の夏休み、わたしは、友人とベトナムはホーチミンを訪れた。当時、関空からホーチミンの直行便がなかったため、タイのバンコク帰りに2泊したのだった。 ホーチミンの旅は、とても素晴らしかった。現地で日本語教師をしているゼミの先輩が案内して

          大嫌いなはずだったタイランド

          デング熱とポテトチップス

          デング熱を患ってしまい1週間ほど、地獄の日々を過ごしていた。 デング熱は、熱帯地域特有の風土病である。デングウィルスを持つ蚊に刺されることによって発症する。 40度ちかい高熱と、頭がわれそうになる頭痛、そして、骨がひんまがりそうな関節痛が容赦なく襲いかかってくる。 あとで、デング熱のニックネームが、Break bone fever だと聞いて、言い得て妙だなと納得した。 効果的な治療法はないらしく、とにかく、解熱剤をのんで、水をのみまくって、ウィルスを外にだすしかない

          デング熱とポテトチップス

          ポルトガルで生まれ、アジア育ったスイーツの歴史

          「サクサクのパイ生地につつまれたとろけんばかりのカスタードがたまらんわ」 ここはクアラルンプールのセントラルマーケット。風が激しく吹き荒れ、スコールが降ってきた。 たまたま見つけたポルトガル料理のカフェバーで雨宿り。わたしと妻は、エッグタルトをほおばっていた。 日本でも、一時期はやったポルトガル発祥のスイーツは、マレーシアにかぎらず東南アジアでも大人気。というより、暮らしの中にがっちり入り込んでいる。 マレーシアやシンガポールのホーカーズにある飲茶屋台にも、香港の飲茶

          ポルトガルで生まれ、アジア育ったスイーツの歴史

          斬新なのになつかしい。かばん屋から転身したタイ料理店

          「こんな、食材の組み合わせってありなんや!」 食に保守的なタイ人が、こぞって通う革新的なタイ料理店があると聞いて、友人と行ってみた。 5年前に一号店がオープンしてから、口コミで広まった人気は、衰えしらず。今や、バンコク市内に8店舗をかまえる。 アメリカや日本からも声がかかっている勢いのある店だ。 その店の名前は、Phed Phed タイ語で、辛いを意味する。その名のとおり、スパイシーな東北料理(イサーン料理)が売りである。 東北料理は、タイ料理の中でも、個性が際立

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          タイらしいホスピタリティ。なごんだひととき

          BBQの店、定休日やったわ。場所決まったら、またら連絡する。 タイ人の友人から電話がかかってきた。 日が沈んだにもかかわらず、うなだるような暑さと渋滞。わたしは、バイクタクシーで待ち合わせ場所に向かっていた。 無秩序に入り乱れる車。そのすきまに、車体をねじ込むバイクタクシー。それでも、なかなか進まない。 渋滞と暑さで、頭がどうにかなりそうだ。 しばらくするメッセージが届いた。どうやらホテルのブュッフェへいくらしい。 えらい、グレードアップしたなと思いつつ、目的地変

          タイらしいホスピタリティ。なごんだひととき

          限りある時間。年老いた両親と過ごした春のひととき。

          「あと何度、両親と桜を見ることができるんやろか」 2年ぶりに日本に帰国した。偶然にも、桜は満開。桜を最後に見たのは、7、8年前だっただろうか。 海外ではたらきはじめてから、桜を目にする機会がほぼくなくなり、いつしか桜の存在を、気に留めなくなっていた。 風が吹くと花びらが、ひとつふたつと舞い踊る。花びらは、川の流れにのってどこか遠くへ消えてゆく。今、咲き誇る桜たちも、あと数日で散りさってゆくだろう。 そんな儚いいのちを眺めていると、「親との限りある時間」という現実に、胸

          限りある時間。年老いた両親と過ごした春のひととき。

          おいしいと感じるメカニズム。食文化の一致とダシが秘訣

          「あっ、これいけるかもしれへん」 クアラルンプールに住みはじめて、半年が経った頃、ようやく口に合うものを見つけて、嬉しかった。 苦痛だったランチの時間から解放された瞬間だった。 マレーシアの甘くて、こってりした食事がどうも苦手だった。日本人はたいてい好きなバクテー(角煮みたいな)も、甘くて漢方くさくて、おいしいとは思わなかった。 しかし、ひとつ口に合うものがみつかると、不思議なことに、ひとつふたつ食べられるものが増えてくる。 タイに住んでいた時も、おなじようなプロセ

          おいしいと感じるメカニズム。食文化の一致とダシが秘訣

          旅の視点が日常をもっとおもしろくする。

          「日常をもっと愛する旅ってなんなんだろう?」 旅を旅でおわらせるのではなく、帰ってきてから、日常を、そしてその先の未来をもっとおもしろくしていくための旅ってなんだろう? 車を運転しながら、ポッドキャストを聞き流していたら、その問いかけにピクっと反応した。 クアラルンプールに住みはじめて、もうすぐ3年目。マンネリ気味なわたしの習慣に風穴を開ける問いだった。 普段見過ごす扉を開けてみるあくる日、いつものように近所を散歩していた。 可愛がっている野良犬が、歩いて15分くら

          旅の視点が日常をもっとおもしろくする。

          学生も政治家もみんなとりこ!バンコクの昔ながらの中華麺

          やっぱり、あの店しかないよね。 プロイさんとオーさんは、互いの顔を見合わせてそう言った。 友人にさそわれて、パーティに参加した。知らない人ばかりのパーティでいささか緊張したが、優しいご夫婦からおいしいヌードル屋を教えてもらい緊張の糸がほどけた。 人見知りな私は、初対面の人たちと何を話そうかこまっていた。そうすると、友人がいきなり、タイのヌードル、すなわちクイッティアオについて話しはじめた。 クイッティアオは、タイ人にとっての国民食で、日本人におけるラーメンやうどんみた

          学生も政治家もみんなとりこ!バンコクの昔ながらの中華麺

          タイのバレーボール通訳体験記

          1月28日は大事な試合なんだ。通訳お願いできる? タイ•バレーボールリーグの予選終盤 ダイアモンドフーズ VS ナコンラチャシマ 現在1位と2位のチームがぶつかる大事な試合。予選通過1位を狙うナコンラチャシマの監督からの依頼だった。 チームには、井上琴絵選手という元日本代表のリベロがプレーしている。彼女の通訳をしてほしいとのことだった。 わたしは、42歳。通訳を生業とはしていないし、通訳経験もほとんどない。 一旦は、断ったが、ギリギリになってオファーをうけることにし

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          ちくわのグリーンカレーと大阪のタイ人

          えっ、グリーンカレーにちくわはありなん? 本場のタイ料理が食べられると思っていたわたしは、がっつり日本の食材が入った、なんちゃってタイ料理にがっかりしたのだった。 さかのぼること20年前。わたしは、大阪は堺市にあるとあるタイ人の家にお邪魔していた。 その方の名前は、ヤイさん。友人のタイ語の先生であった。当時、わたしは、大学のフィールドワークで、在阪のタイ人の暮らしを調査していたのだ。 インタビューが終了すれば、おいともする予定だったが、なんと本場のタイ料理をご馳走し

          ちくわのグリーンカレーと大阪のタイ人