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「厚生年金保険料と在職老齢年金の増額報道」の理解を深める【ニュース補足・解説】
先日、厚生労働省が年金改革のなかで、年収798万円以上(賞与を除く)の会社員らが支払う厚生年金の保険料を2027年9月から増額する方向で調整に入ったというニュースがありました。
また、厚生年金の在職老齢年金では、2026年4月に年金額の減額を始める基準額を現行の50万円から62万円に引き上げることも、併せて、報道されています。
今回は、このニュースを基に補足や解説をしたいと思います。
1.保険料が上がっても年金は増えない!【補足】
ネット等に上がっている一部ニュースでは、「保険料が約9000円/月の増額で、支払う保険料が増えれば受け取る年金額も増えることになる」という内容でニュースになっています。
これは、正しい内容ではありますが、年金制度の仕組みを理解していないと誤った認識を生む可能性もありますので補足します。
厚生年金のなかで支給される老齢厚生年金は、基本的に
「平均標準報酬額(平均標準報酬月額+平均賞与額)×5.481/1,000×加入月数」で計算されます。
この計算式からも分かるように、いくら保険料を支払ったかによって、老齢厚生年金は増えないということです。ただ、今回の年金改革の中で、標準報酬月額の上限を65万円から75万円に引き上げるということも議論されているので、この部分の引き上げによって、平均標準報酬月額が増える要素となり、老齢厚生年金の支給額は増えるということです。
つまり、丁寧な表現としては、「厚生年金における標準報酬月額の上限額の引き上げに伴い、年収798万円以上ある会社員らが支払う保険料を増額する方向で調整に入る。なお、標準報酬月額の上限額が引き上がることで、今回の見直しで影響を受ける会社員らの納める保険料と老齢厚生年金は増えることになる。」といったところでしょうか。
おそらく、ニュースのネタとしては、標準報酬月額の上限増加よりも、保険料が増えるとうワードを前に出した方が、目を引きやすいのでこのような表現になっていると思いますが、ある程度、厚生年金の制度を理解していないと誤った解釈をする可能性があると思います。
2.在職老齢年金制度について【解説】
厚生労働省のHPによれば、在職老齢年金とは、就労し、一定以上の賃金を得ている60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象に、当該老齢厚生年金の一部又は全部の支給を停止する仕組みである。とあります。
要は、60歳以上の年金受給者の年金+賃金収入の合計が多い場合には、年金額を減らすという制度が、在職老齢年金制度です。私の周囲にも、「働き過ぎると年金が減らされる」といったことを話す年金受給者の方もいますが、この制度により減らされています。
今回のニュースは、この年金+賃金収入の合計が多いかどうかの線引きのライン(これを、「支給停止調整額」といいます。)が50万円から62万円に引き上げられるということです。
つまり、このラインが引き上がることで、年金の減額を避けるために働き控えをしていた年金受給者の就労促進に繋がる見直しといえます。
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