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国民健康保険料の値上げについて【ニュース解説・補足】

 先日、自営業者などが加入する国民健康保険について、京都市は厳しい財政運営や高齢化に伴う医療費の増加などに対応するため、来年度の保険料を1人あたりの平均で10%程度引き上げる案をまとめたと、下記ニュースが流れました。市民からも負担増加に対する悲鳴が聞かれ、一部では撤回の申入れが行われるなど話題となっていましたので、解説・補足をします。



1.国民健康保険の概要

 国民健康保険というと、自営業者やフリーランスの方が入られるイメージが多いと思いますが、サラリーマンでも退職後、後期高齢者医療制度の被保険者となる75歳の年齢を迎えるまでの間、国民健康保険へ加入するケースが多く、令和5年の国民健康保険実態調査データでは、国民健康保険の被保険者のうち、53.0%が60歳以上の高齢者となっています。
 なお、高齢者の比率が高いということは、それだけ医療費に係る保険給付の金額が高く、一方で所得の低い方が多くなるので、現役世代の保険料が上がり易くなります。

2.国民健康保険料の仕組み

 上記のとおり国民健康保険の保険料率は市町村で設定していますが、具体的には、都道府県が、保険給付に要した費用を全額、市町村に対して交付するとともに、市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、財政収支の全体を管理する役割を担っています。ビジュアル化すると下図の左下赤枠の部分となります。

沖縄県庁HPより

 市町村としては、都道府県が市町村ごとに決定する国民健康保険事業費納付金の金額に対して、国等からの交付金、市町村の持ち出し、被保険者の保険料等で賄われています。その為、市町村としては、都道府県が決める国民健康保険事業納付金の金額がいくらに設定されるかが重要となります。因みにこの金額は、厚生労働省のガイドラインによると、「年齢構成の差異を調整した医療費水準」と「所得水準」に応じて計算するよう示されています。

3.国民健康保険料の内訳

 あまり被保険者の方は意識したことがないかもしれませんが、国民健康保険の保険料は、医療分、支援分、介護分の3つの使途に分かれて徴収されています。
(1)医療分
 病院に行った時の保険者支払い分に使用されています。
(2)支援分
 後期高齢者医療制度を支援するために使用されています。なお、後期高齢者(75歳以上)制度の医療費分を負担していると考えると不平等だと思われるかもしれませんが、協会けんぽなどの健康保険等においても、同様に後期高齢者分を負担しています。
(3)介護分
 介護サービスを利用している方への支援金として使用されています。 なお、40歳から64歳の方は介護第2号被保険者として、加入している医療保険に介護保険料を上乗して負担し、介護サービスの保険者支払分に使用されています。

4.今回のニュースについて

 前置きが長くなりましたが、本題の今回のニュースについては、京都市がこれまで基金の取り崩しや、一般会計からの繰り入れで保険料を抑えてきたが、その基金がほぼ枯渇し、今後も深刻な財源不足が想定されるため、来年度から保険料を平均10%程度引き上げる案をまとめたということです。
 背景としては、京都市の一般会計からの繰り出しを抑えてその分を補うために、保険料を上げたということですが、これは、やむを得ないと考えます。
 何故ならば京都市の国民健康保険料はこれまで、同規模の政令市と比較しても低く押さえられてきたからです。参考に、大阪市と神戸市の国民健康保険料と比べると、明らかに低いことが分かります。

京都市HPより
大阪市HPより
神戸市HPより

5.今後について

 現行の国民健康保険の制度では、上記のとおり医療費が増えると、都道府県から設定される納付金の金額が増え、市町村が設定する保険料が増える仕組みになっていますが、令和7年には団塊の世代がすべて75歳以上となり後期高齢者医療制度へ移行することで被保険者数は減少する見込みとなっています。
 一方で医療費自体が高額になってきていることや、国民健康保険料として徴収している支援分(3.(2))の増額も予想され、今後も、国民健康保険料の増加が続くことも否定できず、保険料が下がるかは不透明であると考えています。
 なお、市町村ごとに国民健康保険料が異なることについては、都道府県単位で保険料を統一する動きがありますので、今後は、都道府県レベルで各市町村ごとの高齢者比率のバラツキを吸収しつつ、保険料を設定することになりそうです。

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