「vol.8 職人さん100人数珠つなぎ」/後藤美鈴(Misuzu Goto)さん/京繍(きょうぬい)のエバンジェリスト
京繍(平安遷都の際に、刺繡をするための職人を抱えた縫部司(ぬいべのつかさ)という役所が置かれたことが始まりとされています。刺繍による仏画や曼荼羅、武具および衣装に彩りを与えています。@京都府)
後藤美鈴さんが経営する中村刺繍は、お祖父様の代からはじまり、お父様、そして後藤さんと3代に渡り京繍を受け継ぎ発展させながら、歴史ある京都文化の一端を担っています。趣味に忙しい後藤さんは、週末にはバンドのライブや水泳の大会があり、体が疲れるそうですが、平日に大好きな刺繍を刺すことで癒され、元気になるというほど、仕事が楽しいそうです。
1: 大切にしていること //常に糸の艶を出す!//
「一定のリズムを保って刺すと、絹糸がピカッと光ります。糸の艶をキープするためには、一針また一針とリズム良く刺していくことがポイントです。もし刺繍している最中に電話がかかり一旦手をとめてしまうとスピードやリズムを取り戻すのに少し時間がかかってしまいますが、糸艶を必ず出すことを大切にしています。」と語る後藤さん。
糸艶を出す技術を修得するには10年ほどかかると言われています。 “見習いは見て習え”と言われるように、言葉では教えられないものなのだそうで、後藤さんもお父様や先輩方の刺している所を見て技術を修得されたということです。
刺繍を見る際には、糸艶が出ているかどうかについても注目したいと思います!
2: 刺繍教室の経営 //作品にはその人が出る//
後藤さんは20年前から刺繍教室を始められ、全国に展開しています。また、日本で初めて刺繍の通信教育を実施し、コロナ禍の現在、昨年の4月にはオンライン教室をスタートするなど、業界のリーディングカンパニーとしていち早く新しい試みに挑戦されています。
加えて、京都造形芸術大学の短期講習および大原和裁専門学校の講師もされ、多くの方に日本刺繍を教えておられます。刺繍の糸色は約2000種、覚える技法は約150種あり、その上どのような色を使い、どのような配色、構図にするのかについては自分で決めていくのだそうです。とてもクリエイティブであり自分と向き合う孤独な作業でもあるからこそ、作品にはその人となりが出てくると言われます。
「周りの方から“すごい!”と言ってもらえることが嬉しい。」と語る後藤さん。
後藤さんの豊かな感性と高度な技術によってリアルに増して艶と夢のある素敵な作品をこれからも生み出し続けてもらいたいです。
そのためには、後藤さんの作品作りに欠かせない道具の一つである手作りの刺繍針を作る職人さんが高齢かつ最後の一人になっている課題や、日本製の絹糸が無くなっているという現状の困りごとを解決することが必要になります。
//後藤美鈴さんの会社情報//
中村刺繍
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