定年夫婦はもっとホンネで話そうー10年後20年後のためにー
「ボクはもう、働かなくてもいいかなあ」
こんな言葉が夫の口からぽろりとこぼれた。
直前に次女が入籍をして家を離れていた。
子育ての義務は果たしたのだ。
2019年9月、夫は62歳にして主夫になった。
妻のわたしがフルタイムで働き始めた。
夫は家事経験ほぼゼロ。
ゴミを捨てたことは、31年間で2回だけ。
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夫の主夫業は苦戦した。
洗濯物を取り込んでも物干し竿がしまえない。
炒め物に100g800円の肉を買ってくる。
わたしはガミガミとうるさく怒った。
寝室を別にした。
黙ったまま食べる夕飯はおいしくなかった。
ある日、ひどいケンカをした。
翌朝のこと
夫「きのうはごめん。
だけどあつこも考えてほしい。
ボクなりにがんばってやっているんだ」
言葉は心に刺さったけれども、
どうしていいのかわからなかった。
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ふと気がついた。
今61歳で、残された時間はあと20年か30年。
冷たい家庭のままで生きていくのか。
わたしはどうしたいのか。心に問いかけた。
できるなら仲良くいっしょに歳をとっていきたい。
わたしだけが夫に歩み寄るのではなくて
夫も私に歩み寄ってほしい。
お互いに近づけば、努力は50%で済む。
話し合いをした。
かなりの勇気を出してこう言った。
わたし「これから残りの30年間
パパと一緒に生きていきたい。
ふたりで笑ったり、泣いたりしたい。
パパはどう?」
夫「・・・・文句ばっかり言いすぎだけど
・・・・ええと
・・・・・・・・・いっしょに生きていきたいよ」
この原則があれば強い。
夫の「主夫業」と、妻の「フルタイム勤務」が同等だと決めた。
それはわたしが30年間得られなかったもの。
主婦業は「働くこと」と認められていなかったから。
だから家事のできない夫につらくあたって、
30年間の仕返しをしていたんだ。きっと。
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家事は原則として
夫のやり方にまかせた。
いちいち口を出さなくなってから
夫の家事のやり方が変わり始めた。
責任を持つようになったのだ。
「すごいね!すばらしいね」
とおおげさにほめている。
どうしても気になるところは、やんわりと提案した。
わたしだって、自分の仕事を頭ごなしに言われたら嫌だから。
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わたしたち夫婦の10年後20年後のために
お互いにもっと本音で話し合おう。
二人でどう生きていきたいのか、
本当の気持ちを確認して、ルールを作ろう。
感謝の気持ちを示そう。
「パパ、ご飯おいしかったよ、ありがとう」
夫は照れながら、そっと笑った。