その穴のカタチの理由は
「たっくん、鉄道大好きだったよね」
友人がそう言いながら、カバンからとりだしたのはこちら。
(孫のたっくん(5歳)は、小さな鉄オタ。
小鉄なのだ)
「この前、近くのNHK放送局でもらってきたの」
夏にぴったりのノベルティである。
紙でできたうちわである。
描かれているキャラはNHKのどーもくん。
よく見ると、顔の横に、こんな文字が。
「鉄どーもくん」
鉄道と、どーもくんをかけたネーミングだ。
山があって、川があって、魚まで跳ねているぞ。
川面がキラキラしている。
これから来る夏に大活躍するうちわである。
ーーー
が、あつこは気がついてしまった。
この持ち手。
つまり穴、なのだが。
なんだか、変じゃないか?
普通の丸い穴じゃないぞ?
まんまるではなく。
下の丸い部分は、上よりもちょっと小さめで。
小さな切れ目がたくさん入っていて、
そこが折れ曲がるような…。
むむむ。
試してみたいが、たっくんにあげるものだし。
ーーー
理科系夫「これは、かかる力の分散だ」
ひと目見て、冷静な言葉を発するこの人。
あつこ「はあ?」
理科系夫「このような簡易的な紙うちわで、穴に指を入れてあおぐと、指が痛くなる」
あつこは先に続く言葉が予想できてしまった。
あつこ「あー。だから、この切れ込みで指に当たる面積を大きくするのね」
理科系夫「そう、まっすぐな紙の断面だけが指に当たると痛いから」
あつこ「きっとそんなことじゃないかと思ってたけど(ウソ)」
ちょっと威張ってみたくなったのだ。
穴にそっと手を当ててみると、
なるほど、手に優しそうだ。
これを考えた人、素晴らしい。
モノづくりの創意工夫、たいしたものだ。
使う人のことを考えている。こういうところが日本だよね。
たっくんに試してもらおう。
週末に会うのが楽しみになったあつこだった。
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