定年後の夫の育て方(5)寝室を別にしたら
定年後の夫の育て方、第5回です。
以前の話はこちら
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イビキがうるさい
結婚して31年。ずっと同じ寝室で寝ていた。それが普通で特に違和感がなかった。
寝室は、夫の仕事部屋も兼ねていた。夫の仕事が忙しく終わらないときには、机の電気スタンドの光を感じながら寝ていた。
50代後半から夫のいびきがひどくなってきた。
毎晩、音のうるささに耐えきれず、鼻を2回はつまんでいた。
その時は少なくなるのだが、すぐにまた大音響が。
翌朝、寝られなかったと苦情を言うこともあった。
鼻の上にシールを貼って、空間を広げたり。
「いびきラボ」というアプリを使って、実際のいびきの音を録音したり。
医師の診断を受けたこともあったが、治療するほどではなかった。
結局、妻であるあつこが我慢していた。
生活パターンがすれ違う
夫は会社を辞めてから自宅にいる時間が増えた。
パソコンに向かって書類を整理したり、これからの生活設計を立てたり。
定年退職後に妻にまとわりつく「濡れ落ち葉」になる男性もいるそうだが、理科系夫に関してはその心配はまったくなかった。
理科系夫「やりたいことがたくさんある」
その言葉通り、生き生きと毎日を過ごしていた。
寝室のすみに仕事のための机が置かれている。
だから、何かを熱中していたとしても、夜になると、2人分の布団を敷かなくてはいけないので作業が中断してしまうのだ。
それに加え、理科系夫は健康的な生活をするようになった。
朝は5時に起き、夜は10時に寝てしまう。
働いているときには、夜中12時前に寝ることなんてなかった。
睡眠時間4時間から5時間が普通だったのに。
生活パターンが変わったのである。
あつこといえば、慣れないフルタイムで疲れている。
寝る前をリラックスタイムとして大好きなネットサーフィンをしていた。
もともとスマホ中毒でもあり、夜寝る時間がどんどん遅くなって夜12時近くになっていた。
おためしで、寝室を分ける
理科系夫の寝る時間は夜10時。あつこの寝る時間は夜12時。
家事の分担をめぐってぎくしゃくとした感じが続いていたところに、生活パターンの違いも表面化した。
ちょうど子供部屋が空いていた。今まではるちゃんとなっちゃんが生活していた部屋である。2人とも家を出て、それぞれ新しい家族がいる。
そこでお試しとして、あつこが部屋を移った。
はるちゃんが使っていたベッドで寝るようになったのだ。
はるちゃんが使っていた机に自分の本やノートを置くようになった。
寝室をわけたのは、定年夫婦のすれ違いが本当のきっかけだった。
快適だ
寝室を分けて1週間、今までにない開放感をあつこは感じるようになった。
何しろ寝る前の時間を自由に使える。明かりをつけてスマホを見ていても文句は言われない。好きな本も読める。
軽くストレッチだってできる。
快適なのは、夫のほうも一緒だった。
今まであつこが寝るので遠慮していたぶん、のびのびと部屋を使えるようになった。
しかも、自宅にいる時間が長い。
夫はタンスの位置を変更し、自分が作りやすい部屋に改造した。
もともと器用なので、あっという間に「夫の城」とでも、呼べそうな空間が出来上がった。
もはや同じ部屋で寝ることはなくなった。
(4年経った現在でも、部屋は別々である)
面白いことに夫は、健康的な生活を続けているうちにいびきがだんだん少なくなった。夜中にいびきを録音しているアプリで高得点を取るようになってきた。
反面、あつこはいびきをかくようになってしまった。むむむ、夫に比べて不健康な生活をしている自覚はある。
なんとも皮肉な結果となった。
年齢を重ねると鼻や口の周り、喉の筋肉が緩んでくるので、誰しもいびきはかきやすい。が、生活パターンで良くなる例もあるわけだ。
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部屋が別々になって、会話もだんだん少なくなっていった。
そんな時、2人で出かけた外出先で事件が起こったのである。
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