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#4 ボリビア・グラフィックデザインのいま
2021年12月7日 martes
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今日からいよいよ私の配属先であるInstituto Técnico Atenea(アテネア職業訓練校)での仕事がはじまる。グラフィックデザイン、情報処理、会計の3学科を設けており、3年で高等資格が取得できる私立の学校。そのほとんどを占めているのがグラフィックデザインコースに在籍する学生で、900名以上(と、もらった資料には書いてある。)なので、けっこうな規模だ。
私は、2020年2月半ばからこの学校で約30名のグラフィックデザインコースの教員の授業に参加しその様子を観察、また卒業制作の成果物を見れるだけ見ると同時に、ボリビアのグラフィックデザイン業界について調べる日々を過ごした。3月20日にボリビアを去るまでは。急遽日本へ帰ることになった、と当時のコースディレクターに告げたとき、「5月くらいに戻ってくるよ」と言った私。二年近くの時間を経て今、この場所に戻ってきた。
朝9時、校舎のビルに足を踏み入れ、階段をのぼり二階にあるオフィスのドアを開けた。マスクをしているので私を認識できない様子の元同僚。「???」「アツコ?!」。顔見知りのマネージャーと再会のハグ、新しいコースディレクターに挨拶をした。さっそく活動のプランについて話そう、と別室へ移動する。
すでに私の考察からの改善案などはマネージャーと共有していたのと、日本帰国後にオンラインで協働していたこともあり、そこからの提案をいくつかした。校内の教員・生徒に対しての活動と、外の機関や企業とのコラボレーションの可能性。あと、規模は大きくなるが、ボリビアのデザイン業界の底上げができないか、という話もした。日本でいうJAGDAのような職能団体をボリビアにもつくれないか。何人か教員と話をした際も、ボリビアではまだグラフィックデザインという職能がプロフェッショナルだと認知されていないこと、デザイナーはほとんどフリーランスで、力も弱く声も小さいという現状が見えてきた。そしてボリビアで見るデザインの表現、活用の幅が限定的であるとも感じる。生徒の卒業制作をみていても、どれもキャンペーンビジュアルに終始している。ボリビアではSNSで情報を発信したり収集したり、が主流らしく、キャンペーン企画の媒体もSNSを使用したものばかり。
多様なデザインのあり方から学んだり、意見の交換を通じてデザインの感覚を養う、そして自分たちの仕事を社会へ発信できる場が必要なのではないか?これは私の配属先単体で実現できることではないが、配属先が他団体に呼びかけ組織化していくそのスタートポイントをつくるだけでも一緒にできたら、とそんな話をした。日本から持ち込んだいろんな資料を見せながら1時間半ほど話し合う中、コースディレクターは「Mucho trabajo!!! (やることいっぱいだね)」と言い、諸々の提案に興味を示してくれた。私は今週いっぱいで、それらを具体的なプランに落とし込む。「いつでも好きな時にここに来て仕事していいよ。」とオフィスには、前より広いデスクが用意されていた。
デスクで作業をしていると、オフィスを訪れるグラフィックデザインコースの教員何人かは「アツコ?!」とびっくりして話をしに来てくれ、みんな「いつここに来たの?いつまでここにいるの?」と。不思議な感覚。
初出勤の日の夜は、大量に作り置きしたスパイスカリーとボリビアのワインでひっそりと祝杯。
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2021年12月10日 viernes
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仕事が始まるとどうしても疲れてしまい、夜はぼーっとしてしまう。気がつけば週末。街中のデザインを見つつ散歩する時間も確保したいと思いながら、まだうまく時間を使えていない。。
前回の滞在でボリビアのデザインの現状を知ろうと、配属先の先生に話を聞いたり、今のボリビアデザイン界を動かしているであろうデザイナーにメッセージを送ってみたり、としていた中で、あたった情報。
「BICeBé Bolivia」これは二年に一度開催される国際的なポスターデザインの展示会。開催期間中、海外からもデザイナーを迎え、トークやワークショップ、ポスターデザインコンペも企画されている。2009年にスタートしたイベントで、ボリビアの近代デザインにとっては重要なイベントであるように思う。国際的なデザイン交流に関して見つかったのはこのイベントくらい。ボリビアの近代デザインの歴史は浅い。大学で本格的にグラフィックデザインコースが組み込まれたのもここ30年くらいのことで、サンタクルスにある大学UPSAのグラフィックデザインコースが先駆的で、今でもデザイン教育に関しては評価が高いらしい。私個人的なボリビアデザインの印象としては、無理にアメリカ式の型にはめようとして、もともと持っている混沌としたエネルギーの強さ、その魅力が削がれている気がしてならない。独特な色使いや、カルナバルの時に感じた音やダンスの生命感。デザインをどう使うか、が課題のような気がする。
最後に、散歩中に見つけた惹かれる風景をいくつか。
どこまでをデザインする必要があるのだろう。とおもう。
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ATSUKINO(アツキーノ)
2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。
現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/
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