The レベニュー会議 事業で勝つ営業戦略に必要な判断力 振り返りハイライト
ウイングアーク1st主催イベント「updataDX22」にて500名以上が参加したセッション「Theレベニュー会議~DX時代の営業組織を考える~」の続編として6月に「The レベニュー会議 事業で勝つ営業戦略に必要な判断力」を開催しました。セッション後アンケートの満足度は約90%!
「常に変化し続けることの重要性を再認識できた」、「甲子園常連校の例えがわかりやすかった」、「企業の資産を使って営業しているのだからナレッジの共有は当然など、刺さる内容が多かった」など好評の声を多くいただいたこのセミナーのハイライトを前回(4月開催分)に引き続きnoteに記してみました。ぜひアーカイブ動画とあわせてご覧ください。
「The レベニュー会議 事業で勝つ営業戦略に必要な判断力」の概要
株式会社FAプロダクツ 代表取締役会長で元キーエンス・トップセールス、『シン・営業力』の著者 天野 眞也氏と、弁護士ドットコムの取締役で契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」事業責任者として圧倒的な事業成長を率いる橘 大地氏をお迎えし、主に下記2点について、組織全体の収益マネジメントにつながる「レベニュー思考(レベニューマネジメントを行う上での思考法)」を編み出しながらディスカッションしました。
・事業で勝つための営業組織づくり:勝ってきた組織の特徴とは
・戦略と判断:戦略に基づいてどのような材料で判断=意思決定をしているのか、判断力の磨き方
予実管理や人財育成に至るまで、日々判断を迫られる営業、業務推進・企画、マーケティング部門等の方にオススメのセッションです。
*「レベニューマネジメント」とは、収益に直接かかわるマーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスなどの各部門を横断的・統合的に管理し連携させることで、全体収益の最大化を目指すマネジメントを指します。最近ですとRevOps(レベニューオペレーション)が最も近い概念です。
事業で勝つための営業組織づくり① 営業生産性
上記のグラフは、主要先進7ヵ国の労働生産性予測のグラフです。青い線がアメリカで、赤い線が日本。日本は、先進国の中で突出して労働生産性が低いといえます。そんな中、天野さんが所属していたキーエンスは2023年3月期連結決算において営業利益率54.1%を達成しています。キーエンスはなぜここまで収益性の高い組織なのでしょうか。
「キーエンスは“モーレツ”な営業のイメージがあるかもしれないが、実は知的で緻密」と明かしてくれた天野さん。以下のような点がキーエンスならではの強みだと明かしてくれました。
・製造業における顧客価値の解像度が高い。製造業のスピード(納期厳守)に対する重要性をどこよりも早くつかんだ提案を行っていた。
・営業が顧客訪問した際に取得するべき情報のフォーマットが明確に決まっている。(情報を蓄積する仕組みがある)
・顧客情報は開発も営業も等しくどの情報にもアクセスできる。
・営業の評価として「成果目標」と「行動目標」がある。後者は“プレゼンテーション力の向上”など数値が細かく設定されている。「行動目標」が積み上がると、結果として「成果目標」も達成していける。
・情報発信する人に情報は集まる。だからこそ、顧客にとって有益な新しい技術情報を提供する。すると、顧客側からも情報を出してくれることがある。
ここで橘さんから、「キーエンスを真似しようとしても、他の会社がなかなかできないのはなぜか」と質問。
確かに気になる点です。それに対して天野さんは、高校野球の強豪校を例に説明してくれました。
「甲子園に出るような強豪校は毎年メンバーが入れ替わっているし、時には監督も替わったりもしているのに、毎年のように出場している高校は多い。それは、風土の持つ力が大きいと思うのです。練習メニューなど、いかにやるべきことをしっかり徹底してやるかによって結果が伴っているということです。キーエンスの場合は、トップダウンで“これをやれ”ではなくて、施策を自分でつくらせて、プロセスをブレイクダウンさせ、達成するためのストーリーを描かせます。そして、自分が描いたストーリーを着実に実現していくための後押しや細かいチェックを上司が行うのが特徴です。そのようなやり方がキーエンスならではの風土です」
なるほど。そうやって組織として成長し、盤石になってくると「あそこはすごい」と目指して、優秀な人が入社してくる。これも、甲子園の強豪校と同じですね。イノベーションは一夜にしてならず、を実感しました。
事業で勝つための営業組織づくり② 戦略に基づく営業組織
上記は、弁護士ドットコムの売上高の推移。そのうち青色部分が、橘さんが事業部長として率いるクラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」の売上高を表しています。ものすごい成長率です!
橘さんはもともとは弁護士。契約交渉などの分野で活躍されていました。その際に、契約が決定しているのに契約締結までに半月ほどかかってしまう旧来の「ハンコ文化」をベースにした契約手続きに疑問を抱き「クラウドサイン」を立ち上げたそうです。ご自身の経験から事業を生み出されたのですね。
「弁護士から一人営業への転身からはじまり、その後営業組織をつくっていったので、はじめは我流でいろんな失敗を積み重ねていました」という橘さんが試行錯誤の上でたどりついたのが下記のような営業組織のスタンスです。
・「顧客単価」をあげることにフォーカス。
・顧客と最も多く接する営業に対し、製品価値をいかにあげるかということをKPIにしている……フィードバックをもとに機能やサポートレベルを反映している。
自治体から大企業まで多くの組織に導入されている「クラウドサイン」。今、特に力を入れているのが自治体営業で、導入シェア72%を誇ります。しかし、行政営業チームに対しては「現在は利益は見ないのでしっかり日本のために浸透してくれ」という経営メッセージを伝えているそうです。なぜならば、自治体の導入がすすむと対民間のセールスに寄与するから。KPIも他の営業チームとはまったく異なっているそうです。
対民間の営業チームも、企業規模ごとに細分化されています。そして、マーケやカスタマーサクセスもそれぞれのチームごとに別々なのだそう。つまり、行政営業チームには、行政営業担当のマーケやカスタマーサクセスがいる。エンタープライズのセグメントされたチームには、各マーケ、カスタマーサクセスがいるのです。
組織編成のセグメントには以下のような例がありますが、橘さんが採用されているのは「顧客別」ですね。
今後は企業規模だけでなく、その中の製造業向けチーム、医薬品向けチームといった具合にさらに細分化して、業界ごとに適した価値を最大化する方向に舵を切っていくことも考えられているそうです。このように細分化することによって、顧客単価を上げていくことができると橘さんは考えます。
現在も細分化することによって、セグメントごとにプロダクトを変えたり、プライシングを変えたりと、より最適化したサービスが提案できているそうです。
むすび
今回のセッションのむすびに、お二人の言葉をいただきました。
橘さん:「個人としてお客さんと話したいから」という動機で営業職に就いている人もいると思いますが、顧客との会話は個人のものではなくて、会社の資産だということを認識してほしいと思っています。弊社の社員には、ひとつの商談はとてつもない投資の上で成り立っていて、顧客との会話という資産を残すのは義務だという話をしています。営業に携わる皆さんにもそのおもしろみと責任を感じてほしいですね。
天野さん:行動目標も成果目標も数値化して“見える化”していくこと、ボトルネックを見つけて全体最適を考えることが大切だと思います。そのためには、営業マネージャーがデータを活用することによって顧客価値を理解することからはじめるべきだと思います。そうすることで、標準的なメソッドでは太刀打ちできない部分を打開できると思います。データ活用は、もちろん「MotionBoard」ですね。
お二人とも、完璧な締めをありがとうございました。お二人のお話には、プロセスが明確化していること、顧客解像度が高いという共通点がうかがえました。顧客に照準を合わせてチューニングし続ける組織は強い!私としても、大変勉強になるセッションでした。
次回のTheレベニュー会議は秋に予定しています!
ではまた!