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ちょっと待ってちょっと待って。『冬時間のパリ』

『冬時間のパリ』を観た。

名匠オリヴィエ・アサイヤスがパリの出版業界を舞台に、 <本、人生、愛>をテーマに描く、迷える大人たちのラブストーリー。

 わたしの知っているフランス人はみんなスクリーンの中でよく喋り議論しお酒を飲み軽くセックスをする。
 この作品はパリのラブストーリーだと思っていた。じっさいは出版業界のあかるくない今と未来についてしゃべりまくり、不倫をし、政治について喋りまくり、不倫をする。もうものすごい勢いでまくし立てる。えっと、ちょっと待って、この人の妻があの人とそうで、不倫相手はこうなってて?電子書籍はあんまり芳しくなくてブログやオーディオブックの話?すこしでも違うことを考えるとセリフがあっという間に次の次の次にうつっている。でもそんなこれぞフランス映画、という作品が好き。

 小説の読者はストーリーに自分の経験や思想をあてはめる、と作品中の作家がいう。その作家に、元配偶者の私生活を晒しすぎなんじゃないかと読者たち(あるいは記者きどりのブロガー?)が詰めよる。
 先週からの俳優の不倫に息巻く人たちのようで、面白い。私生活の不貞を創作物に勝手に投影させる姿に共通のものを感じる。
 それでもフランス映画にみる不倫の感覚というのはわたしにとっては昆虫食のようなもので、食べる人もいるんですよね知ってます理解はできないですけど、というものに近い。観ている分には楽しい。自由でエゴイスティックで人間らしさがある。

 紙の書籍はこれからどうなっていくんだろう。登場人物のうちの一人である出版社の社長はかじ取りに迷う。
 紙の書籍は宗教のようなもの、というようなセリフがあった。さびれた教会にときどきは人がきて、紙の書籍を大切にさする。そんなことを想像していたら、映画の中の人たちはまたハイスピードで喋りまくっている。はやい。待って。


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