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かさぶたカサカサ1年生(2)ぼっちゃんはとびげりをキメ、厚子はメンヘラ保護者になった【後編】
その日を境に、先方のご家族と毎日連絡を取り合うようになった。
詳細な内容は省くが(どんなやりとりがあったか。を記載することが本記事の意図ではない為)、何度LINEを交わしても、どれだけ子供に指示を繰り返しても状況が改善する様子は一向に見えてこなかった。前にも後ろにも進まない問題を抱えたまま、双方かみ合わないままつかみどころのないやり取りが繰り返される。
先方のご家族と我が家、それぞれがそれぞれの子供に対し聞き取りを重ねるごとに(厚子の主観でしかないが)食い違いを起こし、視界の先がどんどん濁り曇っていくように思えた。
その一方、とびげり事件の現場となった学校は大変に平和な様子であることがうかがえた。
〇〇君と、今日も一緒にどろけーをやったよ。
昨日は体育の班が一緒だったよ。
給食で一緒に豚汁をおかわりしたよ!
〇〇君っておもしろいんだよ~
ぼっちゃんから聞かされるそれは、小学校入学以降何度も厚子の耳を喜ばせてくれた、ほほえましい小学校生活の一コマである。
とびげり事件なんて存在もしなかったかのように、ぼっちゃんと〇〇君の関係も非常に安定しているように感じられた。
しかし、そんな穏やかな教室内と反比例するかのように、先方ご家族の不安は日に日に大きくなっていった。
(そりゃそうだ、だってよう知らん子に大事なご子息を傷つけられているんだから)
とはいえ一体、この温度差の正体は何なんだろう。
あくまで我が家は加害者である。
息子がやらかしてしまったことの責任はすべて我々夫婦にある。先方への謝罪はもちろん、お子さんとそのご家族が安心して学校生活を送れるように行動・対処する義務がある。
頭では分かっているもの、息子から聞かされる現状と、先方ご家族から聞かされる現状との温度差があまりにも激しく、我が家はこれ以上の打てる手立てを見失っていた。
日中、その件で頭がいっぱいになって仕事が手につかなくなることが常となった。
相変わらずご機嫌に帰宅するぼっちゃんに「今日はどうだったか?」「〇〇君の様子はどうだ?」「今日は一緒に遊んだのか?」としつこく詰問することが増え、ぼっちゃんを学校へ送り出す度に「どうか今日も〇〇君をケガさせませんように…」と神に祈るのが朝の日課となる。
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先方ご家族からのLINEにどうしても上手く返事をすることができず、ぼっちゃんが寝静まった夜に頭をひねってひねってひねりまくって、最後の一滴までを必死に絞り出したようなボロボロの言葉の破片をなんとかかんとか組み合わせて返信をすることを繰り返し、秋の深け際に眠れぬ夜が続いた。
そんな生活を送り始めて5日目の夜。
厚子は、秋の人事異動に巻き込まれ連日朝帰り&朝出社を繰り返す赤パン(夫)にギブアップを宣言した。そしてトラブルが起きて6日目、ようやっと担任の先生に全ての事実を伝え助けを求めることを決めたのだ。
深夜3時にしたためた禍々しすぎる長文の果て
「もうどうしたら解決するかまったくもって答えが見つかりません。助けてください…」
と〆られた厚子作の呪われたオンライン連絡帳は、朝の6時半に既読となった。
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呪われた連絡帳唯一の読者こと担任の先生から、その日のうちに連絡をいただいた。
先生にとってあまりに印象的だったのか、発端となった体育の時間のことをよく覚えてくださっていた。そしてその時の状況を詳しく教えていただくとともに、先生の口からトラブルのきっかけとなった”とびげり事件”について衝撃の事実が告げられる。
「本人たちはとびげりって言ってますが、ぼっちゃん君全くとべてなかったですからね。あれは蹴りのうちにも入りません。」
ぼっちゃん、とんでなかったーーーーーーーーーーー!!!!
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己が加害者だからという後ろめたさか、(うちの子がまさかそんなことをするなんて…)という、あらわにしてはいけないと押さえていた独善的な想いを第三者に事実として肯定してもらえた事で、張りつめていた糸が一気にちぎれ言葉にできない感情の洪水があふれ出た。
それは自分自身に対する憤りであり悔しさであったし、隠していたことが明るみとなったことで心が解き放された爽快感と安堵でもあったように思う。
もうこのあたりで厚子は号泣につぐ号泣で、嗚咽を漏らす始末でった。
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「そっ…そうですよねぇ…えぐっ…ぐっ…私も…どっから…とびげりが出てきたのか…うぇっつ、うぇっ…皆目見当もつかなくて…うぇ、うぇ…でも息子は体幹ゼロなんですよぉ…もうこんにゃくみたいな男で…だからぁ…飛べるわけがないと思ってて…やっぱりそうですよねぇ…とんでないですよねぇ…うええええええ」(大体原文まま)
体幹だこんにゃくだ飛んだとばないと意味不明な言葉をくり返す中年女性のデスボイスはさぞや耳に応えただろうに、担任の先生は厚子の涙がおさまるまでひたすら”うんうん”とあいずちを打ち続けてくれた。
そして、今回のトラブルに関して再度当事者2人に聞き取りを行い、事件当時(ぼっちゃんがとびげりをしたと主張したあの日)のヒアリング内容も参考にした上で、改めて正式に「双方に問題はなかった」と判断していただいたのだ。
これまた本意ではない為詳細は省くが、ことの成り行きとしては
小学生男子2人、起きたことも、なぜそれが起きたかも、起こした相手も、起きた結果どうなったかも。その事実の1/3ほども互いの親に伝えられていなかったのである。
大の大人が手を変え品を変え何を聞いても何度聞いてもまるでかみ合わず、なんとも気持ちの悪い違和感のあった理由が、先生にご介入頂いたことであっという間に判明した瞬間であった。
*そもそもトラブルのきっかけとなった”とびげり”さえ飛んでいなったのである。そんな証言力の男子2人。現場を見ていた大人がいなければ、その真相さえも闇の中であっただろう。マジでギリギリセーフである。
その後、学校側の息つく間もないハイスピードの対応のお陰で、先方ご家族と我が家が連絡を交わす必要は一切なくなった。
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聡明な読者の皆さんならもうお気づきであろう。
今回のトラブルは、そもそもトラブルでさえなかったのだ。学校で起きた出来事とそれに伴う行き違いを、大きなトラブルに至らしめたのは完璧に厚子のミスジャッジとそれに付随する愚行であった。
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厚子がまともに事実確認もせず、浅はかに謝ってしまったこと。さらにぼっちゃん自身にまで謝罪をさせようとしたことで、先方のご家族にとっては”誤解が事実”になってしまった。
そして、誤解が事実となったことで、先方ご家族が抱える必要もなかったはずの悩みと不安を与えてしまった。
先方のご家族から初めて連絡を頂いた際に、ただ一言「状況が分からないので学校に聞いてみます」と伝え、学校に共有さえすれば何の問題にもならなかったのだ。
「学校で起きたトラブルは、学校へ。保護者同士でのやりとりはご遠慮ください」
受験本番の面接でも同様の質問を受け、待ってました!と言わんばかりに「まず学校にご相談し、先生のご判断を仰ぎます」と言ってのけていたあのドヤ顔厚子は一体どこにいっちまったのか。
そんな厚子の慢心ついたかのように事件は起き、学校が懸念する通りの最悪のパターンを引き起こしてしまったのだ。
本当に、ただただ恥さらしのお母さんである。
反省してもしてもし足りない。そして学校に対し再三の謝罪と感謝を繰り返す厚子を励ますかのように
「ご両親の”お子様の言うこと信じたい”という気持ちは痛いほどわかります。けれど、悪意や意図なく、事実を正確に伝えられないのもまた子供というものです。今それを学んでいる最中なんですよね。なので、学校としては何かあった際には必ず私共に連絡をいただきたいと考えています。
とはいえ、どれだけ我々が繰り返しお願いしてもこういったトラブルは方々で起きてるんですよ~
6年間ありますからね、絶対また起きる!くらいの気持ちでいてくださいね。」
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と言って下さった。あまりの温情処置と優しさに、厚子は担任の先生に一生の忠誠を誓い、来年もお財布限界まで寄付しよう…って決意したのもこの瞬間であった。
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ご迷惑をおかけしてしまった先方ご家族とは、イベントごとで顔を合わせるとお互い会釈を交わす程度の距離感となった。
一度双方で頭を下げあったが、とはいえできてしまった何とも言えない距離感が縮まることはなかった。
学校側がどのような説明をしてくれ、先方を納得させてくださったか詳細は分からない。しかし、これから何年間も共に過ごすご家族に対し、無駄なしこりを作ってしまった過去は消せない。
幸い、子供同士は相も変わらず楽しそうに日常を送ってくれている。子供たちの人間関係に亀裂が走らなかったこと、それだけでもう大変ラッキーでありがたいことであった。
ただ、お願いだからお主ら今後絶対にとびげりに再チャレンジしないでくれ…と相変わらず毎朝神に願っている。(し、本人にもごりっと伝えている)
最後になるが、これから小学校入学を迎える皆さまに、入学祝代わりに瀕死の厚子おばちゃんから唯一しかし最大の小学校ライフハックを授けたい。
学校で!起きた!トラブルは!すぐに!早く!1秒でも早く!ノールックで!剛速球で!学校に!ほうれんそうするんだよ!!!
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子どもの話はね!正しい間違っているとか!信じる疑うとか!そういうことではなくてね!子供を1人通すと牛乳がサイダーになり、2人通すと牛乳が山崎18年もの(ウイスキー)に変貌するってくらい味変するんだよ!!!いやまじで怖いね!!
*一部お子さんを除く
そんでね!牛乳が山崎18年になっちゃう前にね、できたらサイダーくらいのタイミングで学校の先生に相談してほしいんだ!
小学校の先生ってさ、今まで何百人も小学生やその保護者を見てるわけ!
何年も何十年にも渡ってこういった小学校で起こるトラブルに対処しまくってくれてんのよ!小学校に関するプロ集団だから!!頼って!!!前のめりに頼って!
餅は餅屋!!!!マジ餅!!!マジで全員もち!!!!!!!
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「とびげり・かさぶた・こんにゃく」っぽいワードが聞こえてきたら危険水域突破目前だよ!!お願いだから!厚子の失敗を糧に!小学校生活を!生きて!抜いて!生き抜いて! !俺の屍をこえていけ~~~~~~~!!!!!
ご清聴ありがとうございました。
かしこ
前編を読んでいただいた一部の方から、先方ご家族からのリアクションに対してDMを頂きました。
当時てんぱりまくっていた厚子も同じように感じてしまう時がありましたが、今お相手の立場にたってみたら「そりゃそんな風になっちまうよな!」って大納得しかありません。
私だって、よう知らん子から愛するぼっちゃんが飛び蹴りされたなんて聞いたら「?」となると思います。(この辺、各家庭によって「は!?」となるボーダーラインの高低差はあり、そこを慮りあいながら足並みをそろえていくことが学校生活だとも考えています。)
今回のnoteで伝えたかった内容からは逸れてしまう懸念があったため「どうして、そしてどんな内容のやり取りを先方ご家族と繰り返したか」という理由をカットしており、それが故に疑問が残る部分があることは、一重に私の文章力不足であります。ごめんな!!!
次回のお話は明日3月29日(金)20時頃更新予定です。
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