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『夢介千両みやげ』=山手樹一郎✖️Kindle

『山手樹一郎』沼にハマる覚悟はできているか?

山手樹一郎(やまて・きいちろう)。昭和初期から戦後まで、大衆文学の黄金期を彩った作家。作品数はなんと400を超える(らしい)。映画化、舞台化、テレビドラマ化の数を聞くだけでも、彼の人気ぶりがどれほどだったか想像できるでしょ?
「一つ、人の世生き血をすすり、二つ、不埒な悪行三昧、三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」
この決め台詞でおなじみの『桃太郎侍』の原作者も、実はこの山手樹一郎だってこと、読むまで知らなかったお。彼の作風は「時代小説の粋」を体現していて、人情、謎、粋、そして少しの艶っぽさが織りなす物語が特徴。読んでみるとわかるけど、その世界観は時代を超えて今を生きる私にも響くものばかりだし、読む人を江戸や明治の世界へタイムスリップしたような体験をさせてくれる。

山手樹一郎沼ボイラープレート(定型分

さて、そんな山手作品の中でも新たな読者を沼に誘い込むのにピッタリな作品といえば

『夢介千両みやげ』――寝ぼけた百姓が魅せる人情と粋の旅

さあ、ここからは本題、『夢介千両みやげ』について語りたい、ネタバレはないから安心してね。私が一番最初に手にした山手樹一郎作品で、2024年の7〜8月ごろは、Kindle Unlimitedだったので、気軽に読み始めた。

この物語、いきなり主人公の夢介が登場するんだけど、名前からしてユニークでしょ?「夢介」なんていうからには、のほほんとした男かと思いきや、いやもう、その通りでww、決して期待を裏切らないわけ。

第一話『おらんだお銀』――魅力的な詐欺師と寝ぼけた百姓の出会い

物語は東海道大磯宿から始まり、お銀という詐欺師まがいの女と、田舎臭いのんびりした夢介が出会うところから物語が動き始める。このお銀は、ただの詐欺師じゃなく、人をだましつつも、どこか憎めない、それでいて自信満々で相手を手玉に取る計算高さと、その背後に見え隠れする生き様が、もうなんとも言えない味わいなのね(個人の感想です)。

例えば、お銀が夢介に近づくシーン。

前後を見まわすと、ちょうどいいあんばいに、近いあたりにじゃまになる人かげがない。きっかけをつくるなら今だと思ったので、
「もし、にいさん、助けて……」
お銀は声をかけながら、おおげさに男のうしろから駆けよった。

抜粋:夢介千両みやげ 完全版(全2巻)合本

この一文だけで、お銀が辺りを見回す仕草が目に見えるようで、そのずる賢さと、それをカバーする愛嬌が見事に描かれてて、善人か悪人か、まだ区別がつかないし、夢介がどう相手をするのかもわからないから、全く先が見えない。

夢介のキャラクターが際立つ

夢介。彼は百姓の息子で、どこか抜けたところがあるんだけど、その飄々《ひょうひょう》とした態度の奥に、芯の強さがあって、お銀に胴巻きを抜かれても気にする様子もなく、むしろ

「けっこうでごぜえます。もともと、あの金は、江戸で道楽につかうつもりで持ち出しましたんで、あねごさんもせっかくまあ、いろいろとほねをおって一度手に入れたもの、おらはもうじゅうぶんおもしろいしばいを見せてもらっていますだから、そっくりそのままあねごさんの祝儀にしてもらいますべ」

抜粋:夢介千両みやげ 完全版(全2巻)合本

こんなセリフ、普通の主人公じゃなかなか出てこないから、この言葉に夢介の器の大きさ、そしてただの田舎者じゃないという奥深さが見えてくる。

お銀との掛け合いが絶妙

『夢介千両みやげ』の面白さは、何と言っても夢介とお銀の掛け合い。この二人のやりとりが軽妙で粋。お銀がどんな手を使っても、夢介はそれをさらりと受け流す。こういうテンポ感のある会話劇こそ、山手樹一郎の真骨頂。

たとえば、こんなやり取り。

「夢さん、たった一つだけ教えといてあげますがね、道楽なんてものは、ほんとに自分からほれてみなけりゃ、真の味はわからない。ただ見るだけでいいんなら、絵草紙でも買って、それをみやげに早く国へかえったほうが、あんたのためじゃありませんかねえ」

抜粋:夢介千両みやげ 完全版(全2巻)合本

お銀が夢介をからかおうとして出したセリフ。でも夢介はこれをさらりとかわして

「あねごさんの前だが、おらは女房を金では買わねえ、ほれて心を買っていくつもりだ

抜粋:夢介千両みやげ 完全版(全2巻)合本

もうね、この一言の破壊力が、まさに夢介の底力。

物語の魅力はキャラクターだけじゃない

もちろん、この物語の魅力はキャラクターのやりとりだけじゃないんです。東海道の宿場町が舞台になっていて、その描写がまた素晴らしい。江戸時代の空気感、旅の喧騒、人々の営みが鮮やか。

宝塚歌劇団による舞台化

全く知らなかったんだけど、『夢介千両みやげ』で検索すると、山手樹一郎の本よりも、宝塚歌劇団の写真で埋め尽くされるから、なんだろうと思ったら、舞台化もされてて、華やかな演出と夢介の不思議な魅力がどのように表現されたのか、想像つかない。契約しているU-NEXTで観れるらしいし、100分ほどの尺なので、この冬休みに見ようと思ってる。

Kindleでも読める!

『夢介千両みやげ』はKindleで、、、

スマホやタブレットでも簡単に手に入るので、ぜひ気軽に読んでみて。もちろんKindle Oasis第8世代がおすすめだけどね。


国立国会図書館デジタルコレクションでも読める

SONYデジタルペーパーを持っているなら、A4サイズの画面で楽しめる、検索するなら、
タイトル  夢介千両みやげ   著者・編者 山手樹一郎
で検索するだけじゃなく、
タイトル  新編夢介めをと旅   著者・編者 山手樹一郎
でも検索すると、ちょうどKindle完全版の上下巻を読めることになる。

国立国会図書館デジタルコレクションなら無料(利用者登録が必要)で読めるので、まずはこちらで原作に触れてみるのもおすすめです。

未来の山手樹一郎ファンへ

さて、まだ山手樹一郎を読んだことがないあなた。この『夢介千両みやげ』、間違いなく沼への入口です。夢介の不思議な魅力とお銀の粋な立ち回り、その先に待つ物語の奥深さ。読んだら最後、あなたもきっと山手樹一郎沼にハマること間違いなし。

Kindleをお持ちでなければ、まずは国立国会図書館デジタルコレクションで原作を読むといい、その先で待っているのは、江戸時代の旅と粋の体験、そして新しい自分との出会いかもしれませんね。

私も完全に山手樹一郎沼の住人だから、KindleOasis第8世代はもちろん、SONYのデジタルペーパーを駆使して、つい、ふと、ずっと山手樹一郎作品のことを考えてしまう。それに山手樹一郎氏の作品は400以上あるらしく、もうしばらくは沼にハマったまま、出て来れそうにない。

つづく次回、沼の深奥でお会いしましょう――。

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Atsu1166
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