経営管理のデジタルシフトColumn 第1回:経営管理の潮流
今や事業領域だけではなく経営管理の領域でもデジタルシフトの必要性が叫ばれています。従来からの数値集計や分析は、クラウドやビジネスアナリティクスといったテクノロジーを導入することにより、その正確性やスピードが革新的に高まっていきます。
・そんな今、経営管理を高度化していくうえでの重要なポイントは何か?
・何をゴールとし、どのように進めればよいのか?
・その結果、何が変わりどんな良いことがあるのか?
このコラムでは、これらを具体例も交えながらお伝えしていきます。
Why:各社が目指す「ありたい姿」
経営目標を達成するためには、データの活用度を高め、現状をタイムリーかつ正確に把握し、予測シナリオを的確にシミュレーションしながら意思決定することが重要となります。 これを実現するために、まず最初に何をゴールとするか、自社の「ありたい姿」を描くことからスタートします。
この「ありたい姿」としては、次のような姿を目指す事例が多くなっています。
グローバル/グループ横串のコスト構造、投資収益性を意識した経営
グローバル/グループ連結データの可視化により、グローバルやグループ横串でのコスト構造分析や、事業別ROICなどの投資収益性を意識した経営を可能とします。事業構造、市場動向と連動したシミュレーション
自社(製品・サービス)を起点とした分析だけでなく、マーケット(市場など)起点も取り入れた、事業構造や市場動向と連動したシミュレーションを可能とします。マネジメント階層ごとに必要な情報を可視化し、KPIマネジメントと連動
経営層には全社やグループを俯瞰した業績情報、事業現場では改善活動につながる非財務情報も含めた管理指標情報、というように、各マネジメント階層で必要とされる情報を提供します。
またマネジメント階層ごとのKPIを縦に繋ぐことで、データを軸として、経営戦略がトップダウンで現場まで浸透するとともに、現場での改善活動の結果が経営層からも見渡せるといった、データドリブン経営を実現します。
How:どのように取り組むのが最適なのか
次に、その「ありたい姿」に向けてどう取り組んでいくのがよいか、各社の状況を踏まえて検討を進めます。
構想策定からスタート
構想策定では、経営層やキーマンへのヒアリングにより、将来のビジネスの方向性と照らした「Should Be(あるべき姿)」を定義していきます。
また、データ実態調査を行い、現在のデータの整備・収集状況に応じた「Can Be(実現しうる姿)」も合わせて定義し、これを「Should Be(あるべき姿)」に向けてのステップとすることで、絵に描いた餅で終わらない構想・ロードマップを作り上げていきます。
このとき、「経営層やキーマンへヒアリングを行ったものの、なかなか具体的な意見が挙がらない」というのがよく陥りがちな事態ですが、「ありたい姿」やレポート体系などの仮説をもとにヒアリングすることで、具体的な経営ニーズを引き出しやすくなります。詳しくはまた続編でお伝えします。経営会議にインパクトを与え"続ける"アウトプット
構想策定を通して「ありたい姿」を実現するために必要となる経営管理の分析ストーリー(いつ、誰が、何のために、何を、どういう観点・粒度で分析するか)の仮説を立て、その仮説にもとづいたアウトプット(レポートやダッシュボード)を定義していきます。その後の仕組み構築においても、この「アウトプット起点」の進め方を変えないことが大切になってきます。
経営管理の最大の目的は、有用なデータを多く蓄積し活用することにより「業績向上に貢献し、ビジネスの拡大につなげる」ことです。データを溜める箱を作ることや自動化が主目的ではありません。
この最大の目的を実現するためのポイントになるのが、経営会議の場などで「いち早く新たなアウトプットを取り入れインパクトを与えていくこと」だと考えています。実際に重要な場でアウトプットを使ってみることで、経営層や事業部が経営判断していく上で本当に必要としている、具体的な「真のニーズ」が挙がり始めます。
こうして挙がってくる「真のニーズ」にスピーディーかつ柔軟に対応するためには、構築期間が長くかつ柔軟な変更がしづらくなりがちな、他システムとのデータ連携等の大がかりな仕組みをいきなり作らない、それよりも前にアウトプット・ストーリー作りに集中することが、成功のカギになります。
こういった進め方やインパクトを与え続ける施策については、また続編で詳しくお伝えしていくことにします。
What:実現内容と得られる効果
このような取り組みを進めていくことにより、グループ全体としてデータへの意識や判断の仕方が、良い方向へと変わっていきます。
例えば、グループ各社が自社に閉じた数値を見て各社最適の判断をしていたところから、グループ連結ベースの数値を見てグループ全体最適の判断を行う、すなわち、「内向きでなく外向きの議論」に変わっていくというようなことを実感できるようになります。
他にも、経営管理の高度化に向けて行われる議論が、レポート1つ1つの細かなレイアウトの議論ではなく、改善効果を出すための分析ストーリー仮説の議論に変わっていく、過去の実績やその集計作業の1日2日のスピードの話ではなく、Forecast(見通し/着地見込)ベースの経営判断や、そのための情報の拡張の議論に変わっていく、こういった変化もよく見られます。
そうした小さな変化の積み重ねが、やがて、自社の「ありたい姿」の実現へと繋がっていく変革となっていくのです。
次回以降では、この「ありたい姿」実現への取り組みを進めるうえでの重要なポイントや、ありがちなつまづきポイントについて、事例も交えながらさらに詳しくお伝えしていきます。
アットストリームコンサルティング株式会社
経営管理・管理会計サービス
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社
執行役員・マネージングディレクター 西村 直
アビームコンサルティングを経て現職。グローバル経営管理制度設計ならびにシステム化構想、クラウドシステム導入、分析手法の定着化支援など多数の経営管理プロジェクトを企画・推進。経営管理サービスの責任者。
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アットストリームコンサルティング株式会社
マネージャー 甲本景子
TIS(株)を経て現職。会計関連システム構築、内部統制構築支援、IFRS導入支援など様々なプロジェクトを経験後、経営管理システム導入プロジェクトを多数推進。経営管理サービスを担当。
問い合わせ先:scnote@atstream.co.jp