パリ五輪 男子ゴルフ競技
1.日程及び会場
〇日程 2024年8月1日~4日
〇会場 ルゴルフナショナル(フランス)
〇全長 7174Y(Par71)
2.結果
金 スコッティ・シェフラー(米国) -19
銀 トミー・フリートウッド(グレートブリテン)-18
銅 松山英樹(日本) -17
3.怒涛のサンデーバックナインで大逆転の金メダル、これが世界No.1と言われる所以、スコッティ・シェフラー
第3ラウンドを終えて世界各国の強豪達が上位にひしめき、メジャー大会を思わせるような戦いになった今回のパリ五輪・男子ゴルフ競技。
最終ラウンドもバーディーの奪い合いで、好スコアが続出する展開に。
そんな中、首位と3打差でスタートした米国のスコッティー・シェフラーがスタートからいきなり3連続バーディーを奪い上位陣を脅かします。
その後チャンスを作りながらもなかなか伸ばせないシェフラーを横目に、ジョン・ラーム(スペイン)がバーディーを重ね、一時は3打後続の選手達を離し、勝負のサンデーバックナインに入りました。
後半のスタート10H(Par4)で久しぶりのバーディーを奪ったシェフラー、ここから一気に加速します。
12H(Par4)ではセカンドショットを3mにつけバーディー、そして14H(Par5)からの4連続バーディーで一気に単独首位に躍り出ました。
そして今大会で最難関の18H(Par4)、浮島グリーンでピンが池の際に切られた状況でも冷静に対処、1.5mのパーパットを決め金メダルに輝きました。
最終日は9バーディーノーボギーの9アンダー62をマーク、第3ラウンドにニコライ・ホイゴー(デンマーク)がマークしたコースレコードに並びました。
〇愛妻と愛息、そして信頼できる相棒と掴んだ金メダル
5月に愛息・ベネット君が誕生し、妻・メレディスさんと一緒に初の五輪を経験したシェフラー。
パリに到着しモナリザを鑑賞したり、体操競技を見学したりなどいろいろな経験をしてコースに乗り込みました。
コースのグリーンがなかなか読み切れず、キャディのテッド・スコットに一任させる場面もあり、家族並びに相棒と掴んだ金メダルとなりました。
〇タイガーも成し遂げられなかった”ゴールデン・スラム”挑戦者に参入
この日五輪男子テニスシングルス競技の決勝で、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が新進気鋭のカルロス・アルカラス(スペイン)を破り、悲願の金メダルを獲得。史上5人目のゴールデン・スラムを達成しました。
ゴールデンスラムは五輪の金メダルと、テニス4大大会(全豪、全仏、全英、全米各オープン)に優勝することを意味します。
これまで達成した選手は男女を通じてアンドレ・アガシ(米国)、ラファエル・ナダル(スペイン)、シュテフィ・グラフ(ドイツ)、セリーナ・ウィリアムス(米国)の4選手です。
男子ゴルフではオリンピック競技が1世紀の間中断されたこともあり、グランドスラム(マスターズ、全米プロ、全米オープン、全英オープン優勝)と金メダルをすべて獲得した選手はいません。
シェフラーはマスターズと五輪金メダル獲得で、5つのうち2つ達成しました。しかしその上を行く選手がいます。
今年全米プロでメジャー初優勝、そして先月の全英オープンでメジャー2冠に輝き、前回の東京五輪で金メダルを獲得、5つのうち3つ達成したザンダー・シャフリー(米国)です。
共に世界No.1、2が6人目のグランドスラム達成だけでなく、”ゴールデン・スラム”達成を目指していく世界の男子ゴルフ界。
ジャック・ニクラスやタイガー・ウッズ(共に米国)を含むグランドスラム達成者5人ができない前人未到の記録に、2人は挑みます。
4.最終組で唯一のメダリスト、シェフラーに1打及ばずも五輪出場欧州勢トップの銀メダルを獲得、トミー・フリートウッド
リオ五輪金メダルに輝いたジャスティン・ローズ(グレートブリテン)に次ぐ母国金メダル獲得を目指したトミー・フリートウッド。
メジャーに優勝した経験のあるラーム、シャフリーとの最終組、ここで開催されたフランスオープンの歴代優勝者やライダーカップ勝利の経験があるとは言え、ビックネーム達に翻弄されるのではと見られました。
スタートの1Hでボギーを叩いたものの、2H(Par3)から3連続バーディーで2人に食らいつきます。
後半に入るとラーム、シャフリーがスコアを落とす中フリートウッド1人が逆にスコアを伸ばし、16H(Par3)でバーディーを奪いシェフラーに並びます。
しかし17H(Par4)、セカンドショットを奥に外しアプローチも寄せ切れず痛恨のボギー。これが大きく響きました。
結局8バーディー3ボギーの5アンダー66でホールアウトし、トータル18アンダーで銀メダルを獲得しました。
それでも全英オープンが期待外れの結果に終わったことと最終組の2人を考えれば、フリートウッドの五輪は見事なものです。
これを足掛かりに、PGAツアー初優勝を目指します。
〇戦いを終えての感想
5.五輪への思いが通じた銅メダル、最終ラウンドノーボギーはやはり日本の第一人者であることを証明、松山英樹
好成績で終わった全米オープン後に五輪日本代表が決まり、五輪への思いが強まり出場を決意した松山英樹。
前回の東京五輪では銅メダル争いのプレーオフに敗れ、インタビューでは悔しい思いでいっぱいでした。
第1ラウンドは8バーディーノーボギーの8アンダー63のロケットスタートで首位に立ちました。
迎えた第2ラウンドでは、17Hを終え13アンダーと好調を維持しましたが、最後に落とし穴が待っていました。
ティーショットを右に曲げてラフからのセカンドショットをフェアウェイに刻みましたが、サードショットがグリーンに届かず池に。
打ち直しの第5打も寄らず、トリプルボギーも覚悟しなくてはいけない状況でした。
しかし4mあったダブルボギーを決め怪我を何とか最小限に食い止めたのが、週末につながりました。
この日は3アンダー68で終了、トータル11アンダーで2位タイにつけます。
第3ラウンドも本人いわく”制御不能”状態に。
2Hでティーショットを池に入れダブルボギーも覚悟しましたが、5.5mのボギーパットを決め、ここでも最小限のダメージで食い止めました。
制御不能な状況でも何とかイーブンパー71、トータル11アンダーは変わらなかったものの4位タイに後退。
そして運命の最終ラウンドを迎えました。
最終ラウンドはロリー・マキロイ(アイルランド)と同組、メダルが欲しいもの同士がスコアをお互い伸ばし合います。
2Hでバーディーが先行し、4H(Par4)から3連続バーディーでメダル獲得圏内に入りました。
10H(Par4)、12H(Par4)でもバーディーを奪いますが、メダルへの重圧からかその後はスコアを伸ばすことができません。
マキロイもメダル獲得圏内に入りますが、終盤コースの罠にはまりメダル獲得レースから脱落。
結局最終ラウンドは6バーディーノーボギーの6アンダー65,トータル17アンダーで銅メダルを獲得しました。
大会後のインタビューで「メダル獲るとスポットライトが当たる」とコメントしたあたり、ゴルフがもっと人々の目に当たって欲しいという、松山の思いが十分に伝わりました。