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2024PGAツアー ウィンダム選手権


1.日程及び会場

〇日程 2024年8月8日~11日
〇会場 セッジフィールドCC(ノースカロライナ州)
〇全長 7131Y(Par70)

2.結果

優勝 アーロン・ライ       -18
  (PGAツアー初優勝)

2  マックス・グレイサーマン  -16

T3 J.J.スポーン      -15

T3 久常涼           -15

5  ルーク・クラントン     -14

6  オースティン・エックロート -13

3.最終日の長丁場でいろいろ起きた本大会、最終ラウンドをノーボギーで回りPGAツアー初優勝、アーロン・ライ

 熱帯低気圧の影響で木曜日が全員プレーできず、大会日程が混みこみになり日曜日は第2ラウンドの残りと第3・最終ラウンドをこなさなくてはならない強行軍となりました。
 そんな中、最終ラウンド前に首位マックス・グレイサーマンを3打差で追いかけるアーロン・ライが、6バーディーノーボギーの6アンダー65で回り、トータル18アンダーで逆転。PGAツアー初優勝を挙げました。

〇最後の最後でパットが決まる

 最終ラウンドはショットで高いパフォーマンスを見せるライ。
 3H(Par3)から6H(Par4)まで4連続バーディーを奪い優勝争いに食い込んできます。
 その後12H(Par3)でバーディーを奪ってからはチャンスにつけるもののパットのラインが一筋違い、物にすることができませんでした。
 しかし最終18H(Par4)、セカンドショットがピン右2mにつけるスーパーショットとなり、左に曲がるラインを見事に決めバーディー。
 これが初優勝の決め手となりました。

〇グローブを両手にはめる稀有な選手

 イングランド出身で現在29歳のライ。
 3歳の時にゴルフを始め、両親がライに両手のグローブをプレゼントしました。
 その状況をライが気に入り、以降両手にグローブを嵌めてプレーするPGAツアーの中でも稀有な選手として知られるようになりました。
 DPワールドツアーでは18年にホンマ香港オープンでプロ初優勝、20年にASIスコティッシュオープンで優勝しツアー2勝をしています。

〇ツアー選手権出場が見えてきた

 この優勝でフェデックスカップランキングが25位まで上昇することになったライ。次週から始まるプレーオフ2試合の結果如何では更なる上昇が見込めます。
 昨年もルーカス・グラバーが本大会に優勝し、翌週のプレーオフ第1戦・フェデックスセントジュード選手権に連勝し、最終的にトップ10に入ることができました。
 ライもこの流れに乗って、上位進出を狙います。

3.3Mオープンに次ぐ2位フィニッシュも内容は正反対の2位、優勝が両手からスルリと落ちてしまった、マックス・グレイサーマン

〇バウンスバックもあり初優勝に向け快調の中盤まで

 最終ラウンド首位でスタートしたマックス・グレイサーマン。
 序盤に2つスコアを伸ばし、4H(Par3)で短いパーパットを外し本大会2個目のボギーとなりましたが、すぐにバウンスバック。
 5H(Par5)ではセカンドショットをピン奥5.5mにつけ、左に曲がる下りのラインを読み切ってイーグル。
 その後もピンチになった場面でも微妙な距離のパーパットを決めるなど、グレイサーマンの日と言っても過言ではありませんでした。

 ライが必死にグレーサーマンを追いかけ2打差に詰められるも、13H(Par4)では残り91Yのセカンドショットをバックスピンと下り傾斜を使い”ホールアウトイーグル”。
 この時点でライとの差は4打、初優勝がすぐそこまで来ました。

〇好事魔多し、急転直下の後退劇

 しかしイーグルを奪った直後の14H(Par4)から、これまでの好調がウソのような試合展開となりました。
 グレイサーマンのティーショットが右のカート道に跳ねてOB。打ち直しのサードショットが左ラフに入るピンチ。
 冷静にフェアウェイに戻す選択を選んだはずの第4打が距離のあるフェアウェイ左のバンカーに捕まり、これまで見なかったミスが出ました。
 第5打をグリーン手前に運んだものの、そこから寄らず入らずで3打を費やしてしまいクアドラブルボギーの”8”。
 最終ラウンド2つのイーグルを一瞬で帳消しにしてしまい、ライに並ばれました。

 15H(Par5)のバーディーで一歩抜け出すも、続く16H(Par3)でも落とし穴が待っていました。
 ティーショットがグリーン手前に乗り、13m残ったバーディーパットを奥1.2mに寄せました。
 しかし1.2mのパーパットに3打を要してしまいダブルボギーに、遂に首位の座をライに明け渡してしまいました。 

 意気消沈してしまったグレイサーマン、最後の2Hでバーディーを奪うことができず16アンダーの単独2位で終了。
 2週間前の3Mオープンで入った単独2位とは違う内容となりました。

〇キャディとのコミュニケーション不足?

 14H以降のピンチがあってからは、グレイサーマンとキャディとのコミュニケーションがほとんどなかったと中継でも指摘がありました。
 スコッティ・シェフラーのキャディ、テッド・スコットやタイガー・ウッズとのコンビを長年務めたスティーブ・ウィリアムスはこの状況を打破するために積極的に選手に声を掛け、ミスを最小限に食い止める努力をして優勝に導いてきました。
 グレイサーマンがまだPGAツアーアメリカズ(カナダツアー)、コンフェリーツアーでも戦ってはきたものの優勝経験がなかったことも如実に結果として表れました。
 こういう”苦い薬”を糧に、プロ初優勝を目指して欲しいです。

3.PGAツアー自己最高順位、プレーオフ進出はならずとも次のステップに進めたのは好材料、久常涼

 ここ3試合連続でカットの憂き目に遭い、悪い流れを何とか断ち切りたいという思いでレギュラーシーズン最終戦に臨んだ久常涼。
 第2ラウンドまで6アンダー、4戦ぶりに第3ラウンドへ進めました。
 これまでのモヤモヤを晴らす内容になった本大会、第3ラウンドでは1イーグル6バーディー2ボギーの6アンダー64で回りトータル12アンダーとし、プレーオフ進出やPGAツアー初優勝が見えてきました。
 しかし最終ラウンドはスコアが伸び悩み、6バーディー3ボギーの3アンダー67で回りトータル15アンダーでフィニッシュ。
 PGAツアー自己最高順位となる、3位タイに入りました。

 これまで思い切りの良さをシーズン序盤で見ることができましたが、ここ最近はそれが影を潜め思うような成績を出せませんでした。
 しかしオープンウィークで自分をもう一度見つめ直したり、偉大な先輩・松山英樹のパリ五輪銅メダル獲得で英気を養った久常。
 ”自分もやればできる”と感じた一週間になったことでしょう。
 107位だったフェデックスカップランキングも83位まで上昇することとなり、プレーオフ進出は叶わなかったものの来季のツアーカード(シード権)保持に向けては大きく前進しました。
 PGAツアーがプレーオフに入りますが、休む間もなく今週チェコで行われるDPワールドツアー、D+DREALチェコマスターズに出場エントリーを済ませている久常。
 世界を股にかけて試合勘を鈍らせず、そしてフォールシリーズでPGAツアー初優勝の一報を聞きたいものです。

4.雑感

〇実は”マンデーフィニッシュ”

 実はウィンダム選手権、”マンデーフィニッシュ”になることが決定しています。
 最終組のマット・クーチャーが18Hでティーショットを打った時点で、最終組はサスペンデットのホーンが鳴ってもホールアウトまではプレー可能です。
 グレイサーマンとチャド・レイミーはホールアウトしましたが、クーチャーだけは左のラフに入ったティーショットのボールにティーペックを刺し、月曜の朝にプレー続行を決めました。

 グレイサーマンが16Hで3パットをしたとき、すでに日没近くになっていたためそこで一呼吸を置き、月曜日に残りの優勝争いをグレイサーマンにさせてあげたかったというクーチャーの思いがあったのでしょう。
 いろいろと物議はあるようですが、クーチャーの意見を尊重するしか我々にできることはありません。
(※)
 クーチャーが完全にホールアウトして大会が完結しますが、大勢に影響がないため投稿しました。

〇ルーク・クラントン、アマチュアで今季3度目のトップ10

 日曜日に第2ラウンドの残り3Hと、第3、最終ラウンドの36Hを一気に消化したルーク・クラントン。
 20歳の若者らしくスコアを伸ばし、14アンダーの単独5位でフィニッシュ。PGAツアー3度目のトップ10フィニッシュとなりました。
 ジャック・ニクラス以来、63年ぶりの快挙です。

 しかしここからが大変なクラントン、本当に休む間もなく翌日から開催される全米アマチュア選手権の会場・ヘーゼルティンナショナルGC(ミネソタ州チャスカ)への”大移動”。
 チャータージェットを手配していることと、月曜の第1ラウンドが午後スタートということもあり何とか間に合いそうです。

 その第1ラウンドは、現在世界アマチュアランク上位3人のクラントン、ジャクソン・コイブン、そしてゴードン・サージェントのペアリングです。

〇プレーオフに進む70選手が決定

 ウィンダム選手権をもって1月から始まったレギュラーシーズンも終了、プレーオフに進出する70選手が決まりました。
 グレイソン・マレーの急逝があったため(フェデックスカップランキング57位)、71位までの選手がプレーオフに進出します。
 ボーダーライン上の71位、ヴィクター・ペレスは21ポイントを獲得し654ポイントで71位を維持、72位のデービス・ライリーは17ポイントを獲得し647ポイントで72位で終了。
 その他好成績を下位選手が収めた事例がなく、ランキング変動はなし。
 よってウィンダム選手権当初のランキングでプレーオフ進出の70選手が決定しました。
 例年ならばボーダーライン上の選手で何人かは順位変動があるのですが、争いがなく平穏に終了しました。

 来週からプレーオフシリーズ2戦、そしてツアー選手権を行い2024年の王者が誕生します。

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