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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2023年12月の記事一覧

「2023年 極楽映画大賞」

今年も1年間 数多くの案内をいただきそこから試写を希望し観た作品数115本。 その中からこの場で紹介したのは49作。 本年の 「極楽映画大賞」の発表です。 ではまず部門賞から。 『助演男優賞』 わずか3歳で1歳半の赤ちゃん役のメルヴィル役を演じた ・ゾーエ・イオリオ 「ぼくは君たちを憎まないことにした」|極楽試写会/コラムンの犬 『助演特別賞』 ブルーバックと名付けた巨大な魚を演じた(のかな?) ・ウエスタン・ブルーグローパー 「ブルーバック あの海を見ていた」|極楽

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「ぼくは君たちを憎まないことにした」

2015年フランスで起こった多発無差別テロ。 映画『ぼくは君たちを憎まないことにした』公式サイト https://nikumanai.com/ 2015年フランスで起こった多発無差別テロ。 主人公はその一つパリの劇場で最愛の妻を失う。 彼の選んだ道は残された息子と「今まで通りの生活を続ける」と決意することだった。 テロリストへの憎しみを抱え、訴えるのではなく「憎しみを贈らない」こと。 メッセージをネットに公開し多くの共感を得た。 この事実は書籍化されベストセラーとなった。 それを原作としている。 ワンテーマで展開もほとんどシンプル。 ただしあまりにもの事実、それだけで充分すぎるほど詰まり具合 それを100分というある意味コンパクトな作品中で完成させたことも ポイントだと思う。 テロリストを憎むことは悪の連鎖を助長する あえて「君たちを憎まない」 「ふたりで生きてゆく」 そして 「テラスでワインを飲むこと」 それが最大の戦力なら 自分たちは世界一の部隊だ、と。 主演の ピエール・ドゥラドンシャン 『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』(22)『エッフェル塔~創造者の愛~』(21) と近年よく見ている役者だ。 で、 助演というか・・・ 子役というか赤ちゃん役のメルヴィルを演じた ゾーエ・イオリオ。 フランス、ドイツ、ベルギー、スイスでのオーディション 監督曰く「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている」と。 実年齢は3歳とのことで1歳半を演じたのだが ともかく感服。 監督の言葉に 「長時間にわたるリハーサルと撮影に耐えたゾーエと彼女の両親に、心から感謝したい。」 とあった。 本年度 極楽映画大賞 助演男優賞ノミネート 2023年11月10日 公開

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「弟は僕のヒーロー」

映画『弟は僕のヒーロー』公式サイト https://mimosafilms.com/hero/ 「大事なこと」を教えてくれる作品。 普通だとこういうジャンルの映画の場合「大切な事」と書くことが多いと思うが 僕はあえて「大事な事」と記す。 というのは、 ダウン症とは 知的障害があるという事はなんとなくだが知っていたが それだけではなく 内臓疾患やその他多くの障害を伴い 早世する率も高いという事を知ったことだ。 イタリアの幸せな家に 4人目の子が生まれる。 主人公の少年にとって初めてのその弟はダウン症。 ストーリーの軸は この少年が青年になる過程で 障害のある弟の存在を否定してしまった自分を乗り越える姿にある。 弟は隠す存在ではなくまさにヒーローなんだと(気が付き) 二人の姿をYouTubeにUPすることで・・・。 家族の悩むところは 傍が勝手に思うような「障害児を持つ引け目」ではなく ・・・そんなものは微塵も感じていない・・・ 先に書いたように、早世してしまう可能性に対する点であるのだが この悩みを吹き飛ばしてくれる自分たちのヒーローと 彼を暖かく包み込むこの家族の強さ明るさが美しい。 監督のステファノ・チパーニは1986年、イタリア、サロ生まれの三十代半ばで本作が初の長編監督作。 配役は 主人公のジャックに若手の注目株フランチェスコ・ゲギ 父親役にイタリアを代表する人気俳優アレッサンドロ・ガスマン そしてなにより 弟、ピュアな心を持つジョー役には、実際にダウン症のあるロレンツォ・シスト 原作は 1997年イタリア生まれのジャコモ・マッツァリオールによる『弟は僕のヒーロー(原題:Mio fratello rincorre i dinosauri)』 ダウン症の自分の弟と一緒に制作したショートムービーを2015年にYouTubeに公開したことで話題になり本作で作家としてデビュー。 そして原作の文庫版が発売されたばかりです。買って読もうっと! Amazon.co.jp: 弟は僕のヒーロー (小学館文庫 マ 8-1) : ジャコモ・マッツァリオール, 関口 英子: 本 https://www.amazon.co.jp/%E5%BC%9F%E3%81%AF%E5%83%95%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%BC-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%9E-8-1-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4094072853/ 良い作品だあるからこそ 一言「僕なりの」苦言を記したい。 作品中で主人公が高校の素行の良くない仲間とマリファナを吸うシーンが複数出てくる。 事実なのか、演出的な加筆なのかはわからないが このような作品に若者がごくごく当たり前のように違法薬物を吸うシーンは入れてほしくない。 これを見た若者が「ああ、イタリアでごく普通の若者が、ごくごく普通に吸ってるんだ・・・」 なんてとらわれなくもないし、それでこの作品を見る彼らのこうしたハードルが低まることを誘引してしまいかねないことを危惧するんだな。 もちろん言論、表現の自由にどうこう言うつもりは毛頭ないが 僕としては、こういう作品だからこそ、そう思うのです。お許しいただきたい。 2024年1月12日 公開

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「ブルーバック あの海を見ていた」

12月29日(金)公開『ブルーバック あの海を見ていた』公式サイト https://blueback.espace-sarou.com/ 人の成長、自然保護、それと友情を 心地よく描いてくれた。 オーストラリアの美しい入り江 そこを守る母、そこで育った海洋生物学者の娘 そして、ブルーバックと名付けた海底に暮らす巨大な魚ウエスタン・ブルーグローパー。 彼らを描いた世界、しんしんと心にしみる物語。 母は生まれ育ったその入り江を守ることに体当たりで臨んでいる、 娘は世界の海洋保護を訴え研究する。 同じ海洋保護でも、ピンポイントな視点とワールドワイドな視点でという違いのある母娘とはあるときにはぶつかりながらも 海を愛する絆で結ばれている。 そして 自分たちだけが知る海底に彼女がブルーバックと名付けた巨大な魚ウエスタン・ブルーグローパーがいる。 潜るたびにその姿を現わし、鼻をこすりつけ、まさに交友を深める。 この自然を破壊する開発業者との軋轢、母親の病、 ストーリーは展開し進んでいく。 そしてあまりにも美しい舞台の中で幸せな結末に向かっていく。 ・・・夏休みの学校推薦図書の感があるかなとも思うけど・・・ ともかく、いいねぇ。 オーストラリアというと ここ数年来、現地のアボリジニの保護というか融和、重視というかとても重要な点になっている。 この作品もそうした流れなのだろう 主役のアビー(ミア・ワシコウスカ)の同窓の学生としてアボリジニの役者を起用し 彼らとの生活や交流をさりげなく入れ込んでいる。 そして親友、恋人にはクラレンス・ライアンを起用し心地よいコラボレーションを繰り広げている。 またこのミア・ワシコウスカに関しては出演作「ベルイマン島にて」を昨年見ているのだが、印象に薄かった。 ・・・どうしても前の作品と比べてしまうが・・・ 本作では彼女の持つ何とも言えない、透明感とでもいうのかが生きていた、役者は監督次第なんだなと思いましたね。 そうそう、で、このブルーバックと名付けた巨大な魚ウエスタン・ブルーグローパーなんですが どうにもこうにもかわいいし、AI?ロボット?合成?と疑わざるを得ない。 でも資料を読んでもどこにもその素性というか、何も書かれていない。不思議不思議。 で、 極楽映画大賞特別演技賞ノミネート「ブルーバックと名付けた巨大な魚ウエスタン・ブルーグローパー」 それと、美しい海の映像とそこを漂う彼女達や魚たちの素晴らしい映像に 極楽映画大賞撮影賞ノミネート です。 2023年12月29日 公開