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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2022年8月の記事一覧

再生

「サハラのカフェのマリカ」

映画『サハラのカフェのマリカ』 https://sahara-malika.com/ 僕はこういう映画は好きです。 人によっては異論が多いと思いますが、 でも、僕はこういう作品は好きです。 サハラ砂漠を通る主幹道路の脇のカフェを 一人で切り盛りする年老いた女主人「マリカ」。 彼女のもと、店を訪れる、多彩な人々との交流・・・ 思わず引き込まれてしまう不思議な世界がそこにある。 それは作品解説にある 「アルジェリアで誕生した21世紀の”バグダット・カフェ”」 このコピーがまさに言えて妙。 ただし「バグダット・カフェ」は良い意味で作為的な作品であるのに対して この「サハラのカフェのマリカ」はこれもまた良い意味で作為的ではない点が 大きな違いではないだろうか。 バグダッド・カフェ : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/47884/ 監督は1986 年アルジェリア生まれの新鋭 ハッセン・フェルハーニ 僕はもちろん初めて出会う監督。 彼の作品へのメッセージを読んで上記の違いの理由が判明した。 その一部を引用する 「・・・劇映画とドキュメンタリーの違いは何を重視しているのか。 前者は撮る前に脚本、台本を書くが後者は撮ると同時に書いている、 少なくとも私はそうしている。 ドキュメンタリー映画では何がリアルかが物語を決める。 私は何が現実かを追及するため、どうしてもフィクションが混じってしまう。 『サハラのカフェのマリカ』では色んな観点から観たアルジェリアの現状を描いている。 でも社会学的観点から映画を撮りたくないので、典型的な人物像は求めてはいない。 私はあくまでも映画を作っているから。・・・」 本作品で助演のチャウキ・アマリ、 俳優、コラムニスト、風刺画家でもある彼は その著書である「Nationale1」の中で サハラ砂漠を描いていた。 それがハッセン・フェルハーニの目に留まり 共にこの地を訪れた際に 偶然にも「マリカ」に出会った、というわけだ。 こうした強烈な出会いが本作品を生んだ、ということが事実(ドキュメンタリー)。 もう一点、 マリカをはじめこの店を訪れる皆がイスラム教信者。 彼らは事あるごとに神に言及する、 そこでイスラム教の世界観が語られることで 自分に多様性の意識を再認識させた作品でもあった。 2022年8月26日 公開

「異動事例は音楽隊!」

https://gaga.ne.jp/ongakutai/ 阿部寛演じる捜査1課の剛腕刑事が あまりにもの過激な言動によって上部からにらまれ なんと、音楽隊に異動させられる。 楽器経験は幼少期のころに親しんだ和太鼓ぐらいの彼が ドラムセットを前に仲間との演奏に奮闘するストーリー。 阿部寛の演技が抜群に良い。 特に表情の変化 楽器に向かい合う (当初は左遷させられた待遇に怒り)敵対的 (中盤は、とはいえ、演奏することの意味合いをつかみ始め)混乱気味 (終盤は、仲間とのセッショ

「長崎の郵便配達」

https://longride.jp/nagasaki-postman/ 優れたドキュメンタリー 原爆を題材にした 日本のドキュメンタリー映画、番組は複数ある。 そうした中でも 時間的にも観点的にもここまで複眼的にとらえた作品は少ないと思う。 原爆の被爆を受けて生き延びた当時16歳の郵便配達の少年 その彼と1984年に出会い、小説にした英国人作家 この作家の長女が2018年前後に、遺品の中に当時の作家のコメントを含む取材音源を発見 この3つの時間と3人の目を通して 静