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継母の覚悟
今日も彼はちっとも寝る気なんてなくて、私よりも大きくなった体をコタツにねじ込んでいる。うんことハゲが口癖の小学生のような反抗期。次の日自分で起きることもしないくせに、iPhone片手に就寝時間と決められた22時30分までダラダラと起きているのだろう。
彼と初めて会ったのは、旦那と付き合いはじめて一年後のこと。
当時はまだ保育園に通う5歳児だった。人見知りをしない子だと言われて家に行ったのに、襖を少し開けて覗き込んでくる姿にこっちまで緊張した。数時間後には膝の上に乗ってくるまでには懐いてくれたけれど。
懐いてくれるまでは良かった。旦那も義母もさぞ安心したであろう。
ただ半同棲を始めてからは、彼の子供返りが酷かった。当時の私の帰宅時間は21時頃。ちょうど彼を寝かしつけるくらいの時間だ。私はもちろん食事もお風呂もまだこれから。そんな中で、彼が私に添い寝してほしいと言う。出来るときはするのだが、疲れているからと断ると癇癪を起こし、トイレに篭って壁を蹴ることもあった。
結局身体的にも精神的にも辛くなり、もっと早く帰れるところにと、転職することを決意した。
バツイチのシングルファザーとの結婚を、私の両親は反対しなかった。周りの友人たちが口を揃えて止めてくる中、母は私がいきなり母親になれるのかと心配しただけだ。
継母になる覚悟があるのかと、何度も聞かれた。
当時の私は旦那のことが好きすぎて、いわゆる盲目状態。友人の反対を押し切り、母の心配する意図を深く考えず、とにかく結婚したかった。家族になりたかった。
継母になるということがまだどういうことかも知らぬまま、大好きな旦那とその家族を、ただ愛そうと思った。
旦那と結婚し、彼と家族になってから6年。当時も継母になる覚悟なんか出来ていなかったし、それを言うなら今だってそんなものはない。
それでも彼は私をママと呼ぶ。生意気なことを言い、お小遣いをせびる。部活で試合があると、前日の夜に悪びれもせずにお弁当をねだる。プリントやテストの結果はなぜかくしゃくしゃになって渡される。
私の日常には当たり前のように彼がいる。