E判定からの逆転合格を目指した夏を思い出す雲
地表近くからもくもくと空高くまで発達している大きな雲を見ると私は高3の夏を思い出す。
「夏は受験の天王山」だと耳にタコができるほどに聞かされていた学年集会にはほとほと疲れながらも勉強だけに集中できる夏に向けてとてもやる気がみなぎっていた。
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高校に入学した頃にテレビで特集されていた某大学を見て一気に心を掴まれた。私が学びたいことを思いっきり学べる環境が整っていた。
「目標は〇〇大学に合格すること!」
そう決めた8月24日その日から書き始めた日記を何回も読み返していたので当時のことはよく覚えている。入道雲がもくもくと広がるよく晴れた暑い夏の日だった。
目標が定まったとはいえ、その大学は倍率も偏差値も高かったので簡単に入学できるわけではないと分かっていた。
模試の結果はその事実を明確に突きつけてきた。学校内では上位の成績だったものの、その程度の学力ではまだまだ目標の大学には届かなかった。
毎日毎日勉強を頑張っていたおかげで学内での成績は右肩上がりだったが、毎回のようにE判定の文字を印刷して届く模試結果はもはや見る意味がないんじゃないかとすら思っていた。
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E判定の壁を破れないまま高3の夏がやってきた。担任の先生からは夏明けの模試でC判定取れないと厳しくなってくるかもしれないねという話をされていた。
夏休みを利用して目標大学のオープンキャンパスに参加した。高1の頃にテレビで見た以上の環境に圧倒された。教授や学生の話を聞いてさらにこの大学で学びたいという感情が湧き上がっていた。
改めて目標をしっかりと定めてやる気を再燃できたオープンキャンパス参加後はとにかく頑張るだけだった。
私は器用なタイプではなかったので「質より量」をモットーに食事と睡眠と小休憩以外の時間は勉強に充てるような生活を送ることに決めた。
夏休みだったが、毎日学校の自習室に通った。
自習室が開いてから閉まるまでそこにこもって勉強をしていた。お昼になると食事と固まった身体を伸ばすことを兼ねて自習室を抜けて運動場のそばにあるベンチまでとことこと歩くのだった。
歩いている途中に毎日のように雲を眺めていた。大きな大きな入道雲だった。もくもくと空高くまで広がっている雲が、そびえ立つ壁のように感じて圧倒されると共に私ならこの雲を超えていけるという自信も感じていた。
この雲を見ているとなんだか午後も頑張ろうという気持ちになっていた。
夏休みは結局毎日12時間ほど勉強していた。記録だけを振り返ってもかなり頑張っていたと思う。
そんな夏を終えて9月の模試がやってきた。夏休み前に担任の先生から言われたC判定を取れるかどうかその実力を試す機会だった。
結果はなんと暫定的な目標にしていたC判定に届いたのだった。この時の喜びは今でも覚えている。まだ合格したわけではなかったが、夏の努力が身を結んだ証明でもあったと感じていた。
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そして今年の夏も地表からもくもくと育っている大きな雲を眺めながらあの夏のことを思い出していた。
結局あの夏明けに受けた模試で取ったC判定が一番いい判定だった。あの後はD判定とE判定を繰り返していた。試験前最後の模試での判定も本番試験自己採点結果の判定もEだった。
とはいえ私はあまり気にしていなかった。判定はあくまで判定だし、目標大学は2次試験の内訳の方が大きかったので謎に自信はあった。
2次試験に向けた冬の話はまた別の機会に書くとして、寒く長い冬を超えた私は晴れて目標大学に合格することができた。