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ドラゴンシェフで作った「農園でしか食べられない料理」のレシピの話

サバイバルラウンドの第一回目は、いきなりイレギュラーな企画内容です。
会場は、印西にある柴海農園(しばかいんのうえん)。
収録日時は記者会見翌日。集合時間はAM5:00。。。
イカレてやがる。w

柴海農園は400年以上続く農家の「柴海祐也くん」が始めた有機栽培にこだわった野菜農園です。(柴海くんとは同い年で、実は知り合い。)

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*干し野菜のピクルスが激うまなので、騙されたと思って買ってみ。

記者会見後、参加者全員ホテルに前泊して、早朝ロケバスに乗合で印西まで向かう。

料理のテーマは、「柴海農園でその瞬間しか食べれない野菜料理」
評価のポイントは「柴海農園の野菜がいかに生かされた料理か?」

「この瞬間、ここでしか食べられない」なるほど、僕は料理を提供するときに気温や気圧、つまり天気によって味付けを少し変えるようにしている。
この瞬間と言われると、やはり気になるのは天気。会場は屋外なので尚更気になる。
早速、天気予報をチェックしてみたら、「雨 or 曇り」

そうか。。雨か。柴海農園は景観が綺麗なので少し残念だなと思っていたら、何かアイデアの素が降ってきた。

そのアイデア素を核に、分解と再構築で、面白く深くしていこうと思う。

料理名は「ペトリコール」

「農園の雨」という情景を思い浮かべたところ、雨上がりのあの匂いが思い浮かんだ。土の匂いとでもいうかパウダリーなあの匂いだ。

実は、あの雨上がりの匂いには名前がある。
タイトルにもあるが「ペトリコール」という。
ペトリコールとは、「長い間日照りが続いたあとの、最初の雨にともなう独特の香り」のこと。

ペトリコールという言葉は、オーストラリアの鉱物学者が発表した論文の中で初めて使われて、今も使われ続けている造語だそうだ。
ちなみに、ペトリコールは、雨上がりの匂いの総称で、特定の物質を指す語ではない。

そうなると、僕の性分が疼きだす。「造語の意味が気になる。」そんなわけで調べてみた。

【ペトリコールの語源】
ペトリコールの語源は、ギリシャ語。
ギリシャ語で、「Petra(ペトラ)」は石や岩を現す意味で、「ichor(イコル)」はギリシャ神話において、神々の体内を流れている血液という意味を指します。
つまり、「Petra(ペトラ)」+「ichor(イコル)」=「Petrichor(ペトリコール)」で、石の精霊の血液という意味になる。

そして、ペトリコールは、よく「地面の匂い」とも言われるんだけど、この匂いの主成分は、ゲオスミンというカビ臭の原因物質の匂いなんだよね。

、、、という、前置きがあって、
「ビーツ(赤かぶ)」という野菜に注目してもらいたい。

ビーツ独特の土っぽい香りは、ゲオスミン主体のもの。
そして、ビーツのあの深紅色は、血をイメージさせる。
(*ベタシアニン(赤い色素)、ベタキサンチン(黄色い色素)をベタライン色素とよび、強い抗酸化作用を持つことで有名)

ここまで頭の中で組み立てて、、、ビーツこそ、雨あがりに相応しい食材の様に感じられて、ビーツとその香りを主役にした料理を作ろうと思いつきます。(ここまで15分くらい)

というわけで、今回はビーツを主役にした「ビーツのペトリコール」とう料理を作ってみたいと思います。

レシピ

【材料】
<ビーツの泥塩竈>
・農園の土 適量
・小麦粉 適量
・塩 適量
・ビーツ

<ケールチップス>
・ケール 2枚
・サラダ油 適量
・塩 少々

<ルッコラソース>
・ケールチップス 適量
・ルッコラ 3株程度
・昆布だし 10cc
・塩 少々
・みりん 10cc
・オリーブオイル 30cc

<人参のラペ>
・黄色人参 適量
・白バルサみこ 20cc
・ねりがらし 5g
・塩 少々
・オリーブオイル 15cc

【作り方】

<ビーツの泥竈焼き>

1. 土を炒って殺菌し、ふるいにかけて、細かい粒子の土砂みを使う

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2. ❶の土粉と小麦粉と水を混ぜて、よく捏ねて粘土状にする。

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これで、皮を剥いたビーツをつつむ。

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3. ❷の全体に油をまぶして乾燥を防ぎ、弱火で熱したフライパンで18分以上蒸し焼きにする。
(農園で調理しない場合は、170℃のオーブンで60分焼く。w)

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4. 泥塩窯から取り出し、カットして盛り付ける。

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<ケールチップス>
本来は、ガラスボウルにラップを張って、油を馴染ませたケールを並べて、600Wで5分レンジアップして作ります。

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が、農園での調理のためレンジがなかったので、以下の方法にアレンジしました。

【農園アレンジ版】
1. ケールの葉を切り外し、ビニール袋に入れて油で揉む。5分ほどおいて細胞内に油を浸透させる。

2. フライパンに敷き詰めて、キッチンペーパーをかぶせ、鍋を重石として乗せ中火で5分焼く。鍋とキッチンペーパーを取り外して、塩を振って弱火で1分炙るように火入れを行い、余計な水分を飛ばしカリカリにする。l

<ルッコラのソース>
1. 材料をブレンダーに入れて、攪拌する。

<人参ラペ>
1. 人参を千切りにして、塩を振って5分おいてから水分を絞る。

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2. 調味料を入れて乳化させる。

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 【盛り付け】
1. ラペ、ルッコラの順に重ねる。

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2. 放射状に6等分程度の一口大にビーツを切って、これを乗せ、ケールのチップスで覆う。

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ケールチップスで覆うのは、乾燥と香りが飛んでしまうのを防ぐのと、最後に喫食者自身で塩を振ってもらうのだけど、この塩が当たって雨音に聞こえる設計にするため。

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【プレゼン内容とセリフ】

以下に、須賀さんへのプレゼンの全文を記しておきます。

この場所、この瞬間しか食べられないというテーマをきいて、まず気になったのが天気でした。
予報は雨。
農園の雨かー。残念だなー。と思った瞬間、この料理のアイデアが降ってきました。
シェフは雨の後に沸き立つ匂い知っていますか?
(↓シェフの回答をうけて)
ペトリコールといいます。
料理名は「ペトリコール」

まずは、塩を葉っぱに目掛けて振ってください。そして、耳を澄ましてください。
雨音が聞こえてきます。
(塩を振る雨音がするはず。)

ケールのチップスに中に隠れているのは、ビーツです。
雨に振られた農園の、葉っぱの下から香ってくるペトリコールの香り。
そして、恵の雨で芽吹いた色とりどりの野菜を、その下のキャロットラペとルッコラのソースで表現しました。
柴海農園に降る恵みの雨と、その瞬間に沸き立つ香りをお召し上がりください。ちなみに、今回の料理に、動物性のものは一切使っていません。農園ならではということで、ヴィーガン料理にもなっています。
よく混ぜてお召し上がりください。

ビーツに含まれるゲオスミンは、ペトリコールの主成分と言われています。
更に香りを強化したくて、農園の土で作った塩釜にビーツ包んで、炭火で焼きあげました。
これは、中国江南地方の叫化鶏(きょうかどり、中国語 叫化雞 ジアオホワジー 、別名:乞食鶏)という料理からヒントをもらいました。
下処理した鶏を蓮の葉で包んでから、さらに粘土質の泥で全体を包み、丸ごと炉で蒸し焼きにする料理です。

ペトリコールの語源は、ペトラは石、イコルは神々の血液 という意味で、そういう意味でもビーツを想起させるワードです。

ある特定の匂いを嗅ぐことで、それにまつわる過去の記憶や感情がよみがえることを「プルースト効果」といいます。
感情を揺さぶるのは、五感の中で嗅覚(きゅうかく)がもっとも強いといわれています。良い思い出があれば、それが強く思い出され、悪い思い出があれば、それが思い出されるので、シェフにとって雨が良い思い出になるよう設計しました。

そして、僕はこの回でもって、自身が「料理人」であることの自己肯定感が低かったことを認識して、自分も料理人と胸張って言っていこうと決意したのでした。

以上です!

次回も真摯に楽しみます。

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