離婚は死亡リスクを高めてしまう
結婚していた人々が離婚や別居をすると,さまざまなリスクが高まるという指摘は,古くから行われています。長年にわたって多くの研究が行われてきているのですが,多くの研究の中で,離婚者や別居者では死亡のリスクが高まるという結果が報告されています。
関連の探究
とはいえ,本当に関連があるのか,どのようなプロセスで関連が生じるのか,関連を抑制したり調整したりする要因が存在するのかといった検討を行うことが重要です。
一部の研究者は,婚姻を観賞して離婚をしたり別居をすることで死亡率が上昇するという現象は,少なくとも部分的には見せかけの関連であると主張しています。この主張は,実際には結婚しているカップルのうちから,心理的・健康的な問題がすでに存在しており,そこから離婚が発生し,さらに死に至る問題へとつながるという可能性です。
他には例えば,失業は離婚の確率を高めることが知られています。しかし一方で,失業は健康上のリスクも高め,結果的に死亡率の上昇にもつながることが知られています。もしもこのような現象が生じるならば,離婚が死につながるということよりも,離婚と死亡について共通する失業という要因があることになります。
媒介要因
夫婦関係の解消は,身近なところに存在する社会的なサポートを行う関係性が失われることを意味します。そして,身近な社会的サポートを行う関係性は,心身の健康を大きく左右することが知られています。ということは,離婚や別居によってサポートが減少し,健康状態の悪化を経て,死亡率を高める可能性があると言うことになります。社会的なサポートは,離婚と死亡率との間をつなげる媒介要因になる可能性があるということを意味します。
また,経済的な要因も,心身の健康を左右することが知られています。離婚は,個々人の経済状況を悪化させる要因になることが多く,結果的に健康状態の悪化につながることも考えられます。
調整要因
たとえ夫婦関係が失われたとしても,周囲からのサポートが十分にあれば,健康状態の悪化や死亡率の上昇につながらないという可能性もあります。また,時代によって影響の様子は変わるかもしれませんし,離婚や関係性の解消が行われた年齢によっても,影響は変わってくる可能性があります。このように,関連の様子を変える要因のことを,調整変数といいます。
実際に,離婚や関係性の解消は,死亡確率とどのような関連を示すのでしょうか。メタ分析で関連を検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Meta-analysis of marital dissolution and mortality: Reevaluating the intersection of gender and age)。
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