
職場や教育場面で非認知能力に介入する際のポイント
現在,学校でも職場でも,うまくパフォーマンスを高めていくことの多くは,状況よりも個人の特徴にある程度の原因が求められる世の中になっています。
要は,「自己責任」です。
そのために,私たちはそれぞれ,つねに高いところを目指そうとして,努力を積み重ね,自己研鑽をしつづけることを求められます。……いや,正直言って,疲れてしまうこともありますよね。
アメリカ合衆国では,企業その他の組織は従業員の学習や自己研鑽の介入に対して,年間で約1700億ドル以上を費やしているという統計があるのだとか。このような各個人をトレーニングするプログラムといういうのは,今や当たり前で,国家レベルの経済成長にも影響を及ぼすと言われています。
大学生には足りない
「大学ではもっとこういうことを教えて欲しい」という要求が出されることは今に始まったことではありません。そして,確かに就職活動で重視されるようなポイントは,明確に大学の中のカリキュラムに示されているわけでもありません。
◎社会的スキル
◎チームワーク
◎コラボレーション
◎プロフェッショナリズム
◎労働観
◎リーダーシップ
◎グローバリズム
それぞれは,大学のカリキュラムのどこかには含まれていると思うのですよね。いまどき大学の授業は大講義室に座って受動的に授業を受けるものばかりではなく,グループワークやディスカッション,プレゼンテーション,資料をまとめることなど,多岐にわたるスキルを必要としますので。昔の大学の感覚で捉えていると,現状とは離れていくように思います。
しかし,「大学では十分にスキルが教えられていない」と指摘されることは,日本だけでもないようです。
非認知能力
知能や学力以外の要素であり,測定が可能で,個人差があり,何らかの社会的なアウトカムに結びつき,トレーニング可能な心理特性を総称して,非認知能力と呼ばれます。これは,社会情動的スキルとか,ソフトスキルとか,非認知スキルとか,名称はいろいろと呼ばれているのですが,なぜか日本では非認知能力と呼ばれることが多いですね。
まさにこの中に,先ほど示した様々な「スキル」のような要素がふくまれてきますので,教育場面でも職業場面でも,多くの人が注目しているというわけです。
どのように向上させるのか
非認知能力の定義のなかに,「可鍛性」つまりトレーニングで変えていくことができるという要素が含められています。ということは,職場のなかでもトレーニングで,非認知能力を向上させることができるはずです。
では,この観点からレビューをおこなったこちらの論文を見て,トレーニングの可能性を探ってみましょう(Improving Noncognitive Constructs for Career Readiness and Success: A Theory of Change for Postsecondary, Workplace, and Research Applications)。
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