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さまざまな出来事を経験するのがいい結果につながるのか
できれば,誰でも健康で幸福な生活を長期間にわたって送りたいものですよね。ストレスの要因をできるだけ少なくし,健康や幸福になる心理状態を保つことも重要ではないかと思います。しかし,日常生活の中で,どのような経験をし,どのような活動を行い,どのような感情を抱くかということも重要な要素です。
「心を変えろ」というのは,何をしたらいいのかよく分かりません。それに対して「普段の生活を気をつけよう」というほうが,やりやすいようにも思います。
ストレッサーの多様性
普段の生活の中で,あらゆることがストレッサー(ストレスの原因)になりえます。ささいないざこざ,仕事,家族,お金など,異なるカテゴリーにわたるさまざまな要素が,ストレスにつながる可能性があります。
ストレス要因の多様性という考え方が,近年,注目されているようです。しかし少し直観とは異なる研究知見もあります。たとえば,ストレス要因の種類が少ない人は多い人に比べて,情動的な幸福(ポジティブ感情やネガティブ感情)がよくない傾向がみられるという報告です。これは,ストレス要因が少ないということが,同じストレス要因を繰り返し経験しており,ストレスが慢性化することで幸福感に悪影響が生じていることを示唆しています。
また別の研究では,家事,運動,労働など,日常生活での多様な活動に関与することは,高齢者の幸福を高める要因になる一方で,若年層では幸福度を低めるという複雑な関係を示すことも報告されています。比較的若い成人にとっては,多くの義務を伴う役割に従事することがストレスになっている可能性もあります。
出来事のポジティブさ
出来事そのものにも,「ポジティブさ」「ネガティブさ」があります。楽しい会話,自然の中で過ごす時間,娯楽活動など日々のポジティブな出来事は,日常生活において重要な要素なのですが,日常のポジティブさという観点からすると,あまり研究は行われていないようです。
毎日の出来事を調査する研究では,平均すると日々の出来事はポジティブな出来事が多く報告されることがわかっています。ポジティブな出来事は,内面的な状態や思考というよりも,その人の外部にあるものであり,その人を取り巻く環境とのやりとりを反映すると考えられます。そして,ポジティブな出来事が発生すると,その日にポジティブな感情が大きくなることが報告されています。
多様な出来事
ポジティブな出来事の多様性は,本人のパーソナリティ特性に関連するのでしょうか。ビッグ・ファイブ・パーソナリティでいえば,どの特性が出来事の多様性に関連するのでしょう。また,ポジティブな出来事の内容が多様になると,よりウェルビーイングが高まるのでしょうか。
このあたりの問題について検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Positive event diversity: Relationship with personality and well-being)。
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