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ダークな性格のトレーニング可能性
ダーク・トライアドは,ナルシシズム,マキャベリアニズム,サイコパシーという3つのパーソナリティ特性の集合体とされます。
◎ナルシシズム(自己愛):自分に対する誇大な感覚,偉大さを周囲の人にも認識するように求め,周囲の人に共感しない
◎マキャベリアニズム:ほかの人を自分のために利用,人間関係に対する冷淡さ
◎サイコパシー:衝動的で倫理観,罪悪感をあまり抱かず,社会的規範を破っても良心の呵責を感じない
ナルシシズムは古代ギリシャのナルキッソス神話から精神分析学者のフロイトが着想を得て概念化したところから始まった概念です。マキャベリアニズムは16世紀のイタリアの政治思想家ニコロ・マキャベリが書いた本から概念化された個人差特性です。サイコパシーは,特にロバート・ヘアの研究で広まった概念で,特に危険な犯罪者の特徴として概念化されました。
ダーク・トライアドとビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連を検討した研究も数多いのですが,おおよそ,ダーク・トライアドのいずれの側面も協調性とのマイナスの関連が示されています。ただし,ナルシシズムについては,関連は明確ではありません。これは日本の研究にも共通していますね。
変化するのか
さて,ダーク・トライアドの3つの特性は,変化させることができるのでしょうか。また,これらはどれくらい安定しているのでしょうか。
そもそもパーソナリティ特性というのは,時間や場所を越えてある程度安定した個人差特性のことを指します。ですからダーク・トライアドであっても,時間を超えて安定している(この「安定」は,順位があまり入れ替わらないことで示されることが多いのですが)ことが,重要なポイントになります。
時間的に安定しているなら,「あまり変化しない」ということになり,あまり変化しないのなら「働きかけても変わらない」ことを意味するのではないでしょうか。
ということは,ダークな特性を直していこうとしても,あまり意味はないのでしょうか……。今回はこんな観点から,ダーク・トライアドのトレーニングについてレビューした研究を見ていきましょう。こちらの論文です(Longitudinal Stability and Change of the Dark Triad: A Call for Research in Postsecondary, Occupational, and Community Settings)。
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