性格と産後うつとの関連はあるのか
妊娠中や産褥期になると,特に精神疾患にかかりやすくなるリスクが高まるといわれています。産後の母親の精神疾患としてもっとも一般的なのは,気分障害(うつ病)です。
出産後に見られるうつ病は,産後うつ病(PPD)とも呼ばれます。10%から20%の女性たちが,出産後1年以内にうつ病を発症し,そのうち25%では1年間以上も継続するそうです。
妊娠中にもうつ病は見られます。妊娠中にうつ病になるのは妊娠第三期(妊娠第25週以降)が多いそうです。そして,妄想や自殺念慮(自殺が頭をよぎること)が多くみられるそうです。そして,妊娠中にうつ病を発症すると,産後うつになる確率が3倍になるとのことです。
脆弱性・ストレスモデル
さまざまな要因が精神病理学的障害に対する感受性と相互作用して結果を生じさせる様子を,素因・ストレスモデルと呼んだりします。その中で,素因として弱さのようなものが内在化されていて,そこでストレスがかかってくることで,一気に病理が表面化するような様子を,脆弱性・ストレスモデルと呼んだりもします。
産後うつ病の原因は,明らかにはなっていません。ただし危険因子としては,社会経済的な地位の低さ,妊娠中の生活ストレス,妊娠中の困難さ,夫婦の希望不全,不十分な社会的支援,精神病理学系の既往歴などが挙げられます。
性格特性
産後うつ病の脆弱性を高めるようなパーソナリティ特性を特定することにも,意味があります。ある種のパーソナリティ特性は,抑うつ傾向を高めることが知られているからです。
たとえば,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの中では神経症傾向が抑うつ傾向を高めるパーソナリティとして知られています。また,依存性,強迫性,完全主義,対人感受性,HSP(環境感受性)なども,抑うつを高める方向に関連します。
しかし,一般的な抑うつ傾向やうつ病と,産後うつ病とでは,関連するパーソナリティが異なるかもしれません。しかし,これまでの研究結果ではそれほど統一的な見解へとつながっていないようです。では,メタ分析で関連を検討するとどうなるのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Personality traits as a risk factor for postpartum depression: A systematic review and meta-analysis)。
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