楽観的な人は健康なのか
「ものごとをポジティブに考えようよ!」という言葉にいちばん近い心理学の概念は何でしょうね。いわゆるポジティブシンキングというやつです。
「物事をポジティブに考えれば,ポジティブな結果がやってくる」という信念は根強いものがあります。「引き寄せの法則」と呼ばれるようなものもこれに近いですよね。「類は友を呼ぶ」という言葉もありますが,ポジティブな思いのもとにはそれとよく似たポジティブな結果がやってくるものだ,という考え方です。実際には,もう少しいくつかの要素があるようですが。
生存者バイアス
ただし……ここにはいくつかの認識を歪めて捉えるようなバイアスが働いているのも確かだと思います。
たとえば,生存者バイアスです。
これはたとえば,「ポジティブに考えて実際にポジティブな結果が得られた人だけが『効果がある』と主張する」といった現象として現れます。本当はその結果を得られていない人が多数いたとしても,一部の成功した人だけが「これは効果がある!」と主張することで,あたかも法則として成立するように感じられていきます。
やめない&ゴールずらし
それだけではありません。「ポジティブな結果が手に入るまでやめない」ようにすれば,もしかしたらいつかはその結果が手に入るかも知れません。結果が得られるまでの期間という要素は,研究をする上では考えておかなければいけない要素なのですが,日常生活ではそこまで厳密に考えることも少ないことでしょう。
さらに,「当初望んだ結果そのものではなくても,少しでも近い結果が得られれば成功だと見なす」というように,ゴールをずらすことも,より成功したと感じさせるためには有効です。しかしこの「ゴールずらし」は,けっこう至る所で見られる現象ではないでしょうか……。
楽観性と健康
では,本当に楽観的であることは健康に結びつくのでしょうか。こころの健康というよりは,身体の健康について,ちゃんと知っておきたいですよね。この問題をメタ分析で検討した研究があります。この論文(Optimism and Physical Health: A Meta-analytic Review)です。
この論文では,メタ分析をするために先行研究の文献を集めています。2009年4月に文献データベースで検索を行い,基準に従って取捨選択を行うことで,最終的に83研究に掲載された108個の効果量を分析の対象としました。
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