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プラセボの薬で体重は減るのか

割引あり

肥満は,世界中で公衆衛生上の問題となっています。その割合はどこの国でも増加傾向にあり,肥満の人は標準体重の人に比べて医療費が約30%高くなるという推計があるようで,経済的な負担の増加にもつながっているそうです。

BBCのニュースによると,世界の肥満人口が10億人を超えていて,子どもでも肥満状態にある人々は1億5900万人もいると推計した研究があるそうです。


偽薬

体重が増えてしまった人々に対して,どのような介入方法があるのでしょうか。食事療法,薬物による介入,心理学的アプローチ,または手術などを行う場合もあります。

この中で近年では,肥満治療に対するプラセボ効果(偽薬効果)も注目されているそうです。プラセボ効果とは,治療や薬が本来持つ効果以外に,患者が治療の有効性を信じることによって生じる心理的または生理的な改善のことです。実際には有効成分を含まない偽物の薬(プラセボ)や偽物の治療が,患者の期待や信念を通じて健康状態を改善する現象です。

エビデンス

偽の肥満手術を受けた患者が,有効な手術を受けた患者に比べて約71%の体重減少を示したというメタ分析の結果もあるそうです。なかなかの効果です。

また,架空の低カロリーダイエットによるプラセボによる肥満に対する効果を報告する論文もあるようですし,空腹感に対するプラセボ効果も報告されているようです。参加者に,実際には380キロカロリーのミルクシェイクを,140キロカロリーの「ヘルシーシェイク」として飲んでもらうグループと,620キロカロリーの「贅沢シェイク」として飲んでもらうグループで比較した研究があります。すると,「贅沢シェイク」として飲んだ患者のほうが,強い満腹感を抱く傾向があるそうです。

ホテルで働く従業員たちに,この仕事が「良い運動であり,活発なライフスタイルを推奨する公衆衛生局長官の勧告を満たしている」という偽の情報を伝えると,情報を受け取ったグループでは,体重,血圧,体脂肪,ウエストヒップ比,BMIが減少する効果が見られたそうです。


倫理的問題

プラセボ効果を狙って偽物の薬を処方することには,倫理的な問題もあります。医薬系の研究でプラセボを使うときには,医師は患者にいまプラセボを処方していると伝えることはありません。プラセボの効果を検討するには,「欺瞞(だますこと)」が不可欠なのです。

しかし近年,「オープンラベルプラセボ」と呼ばれる,偽薬を偽りなく投与することの効果も検討されており,一定の効果が報告されているそうです。

肥満患者が減量しようとするときに,プラセボ効果はどれくらい有効なのでしょうか。ドイツで行われた研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Open-label placebos reduce weight in obesity: a randomized controlled trial)。

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