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病気になりやすい性格はあるのか
この十数年,パーソナリティと身体的な健康との関連に関する研究も世界中で行われてきています。
「特定の性格の人がある病気になりやすいとか,そういうことはあるのか?」
「健康や不健康に関連する行動は性格に関連するのか?」
という,多くの人が抱きやすい素朴な疑問に答える研究です。
じゃあ,どうやってそれをするのかということですが,
◎できるだけ多くの人びとにパーソナリティ検査に回答してもらう
◎できるだけ長期間,追跡調査を継続的に行う
という方法です。
言うのは簡単です。しかし「じゃあやってみろ」といわれても,なかなかできるものではありません。
世界中には,長期間おなじ人々を追跡調査する研究プロジェクトが数多くあります。そしてその中には,研究者が分析できるようにデータを公開している(自由に使えたり,一定の条件・契約下で使える)プロジェクトもあるのです。
そこで,こういったデータを使わないと問題が解決できない研究者たちは,それらの研究プロジェクトと共同研究を申し込んだり,データの提供をお願いしたりしながら,分析して論文を書いていくことになります。
今回はいくつかそういう研究を見ていきたいと思います。
目次
・健康に関連する行動
・心臓疾患・脳血管疾患のリスク
・よく座ってテレビばかり見ているのは
・鍵は勤勉性と神経症傾向
・最後に:健康のために性格を変えるべきなのか
健康に関連する行動
心理学の研究所であるオレゴン・リサーチ・インスティチュートの研究者とハワイ大学の研究者の共同研究があります。
1959年から1967年にかけてハワイの小学校で教師にパーソナリティを評定された子どもたちが41歳から50歳になった1999年と2000年に追跡調査をしています。分析の対象となったのは963名です。ハワイの学校ですのでアジア系も多く,37%が日系の子どもたちです。
この研究は小学校の時のビッグ・ファイブ・パーソナリティで,40代の喫煙,アルコール摂取,BMI,自己評定の健康度を予測できるかという,とても長い時間をかけた調査になっています。
結果をまとめてみます。
◎勤勉性の高さは喫煙をしない方向に影響
◎女性のみ,協調性の高さが喫煙をしない方向に影響
◎外向性の高さと神経症傾向の高さが飲酒をする方向に影響
◎協調性の低さと神経症傾向の高さがBMIを高める方向に影響
◎外向性の高さと勤勉性の高さが健康度の高さに影響
注意点は,パーソナリティがすべて「児童期(小学生の時)」に測定されたものであるという点です。そして全体としては,ビッグ・ファイブの中では勤勉性の高さが健康度に影響していそうです。「まじめな生活」「規則正しい生活」が健康にはいちばんなのかもしれません。
心臓疾患・脳血管疾患のリスク
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