交際のなかでみられる公正世界信念
よい出来事はよい人のもとに起こり,悪い出来事は悪い人のもとに起こる,という人間の信念のことを,公正世界信念といいます。私たちは,人々はその人が得るべきものを得て,その人が得るべきではないものを得ることができないものだという,世の中は公正なものだという感覚を信じる傾向にあります。
この考え方は,「正義は必ず勝つ」「頑張った者は報われる」「悪いことをしたらどこかでとばっちりを受ける」という考え方へとつながっていきます。このように考えることで,世の中は秩序だっており,混乱しておらず,自分もそのような秩序のある世界で安心して暮らすことができると思うことができるというわけです。
対人関係の公正世界
公正世界信念のような世の中の見方は,対人関係についても大きく関係してきます。公正世界信念は,誠実な人間関係をもたらすと考えられるからです。
人間関係の誠実さは,人々の生活全般にも影響しますし,誰かと交際するときにも重要です。恋愛関係でも,相手に対して不誠実な態度をとったり,噓や欺瞞を伴ったコミュニケーションをすることは,信頼関係を損なうことにつながります。
恋愛
同じ噓をつくといっても,パートナーについて認識される不誠実さと,自分自身から発せられる不誠実さの視点は異なります。しかし,どちらについても,公正世界信念が高いと不誠実さが減少するという研究がこれまでに行われているそうです。
ただし,公正世界信念は,いくつかの内容に分かれることも知られています。たとえば,内的公正世界信念は,世の中は因果応報でなり立っていると考えることで,究極的公正世界信念は正義は揺るがないと考える信念を指します。また,一般的な公正世界信念と,個人的な公正世界信念に分ける方法もあります。
一般的な公正世界信念は,配偶者を信頼することに関連することもこれまでには報告されているようです。また個人的な公正世界信念は,自分が倫理的な行動をとることを重視するという報告もあります。
公正世界信念が恋愛関係の中でどのように関係してくるのか,多くの調査を用いて検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Is peoples’ belief in a just world associated with (dis)honesty in romantic relationships?)。
ここから先は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?