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開放性と偏見との関連

偏見の定義とは何でしょうか。昔,心理学者のオールポートは,次のような定義をしていました。

◎偏見:社会集団の一員であることに基づく他者への否定的な態度

偏見は,明らかな場合もあれば,暗黙のものもあります。たとえば明らかな偏見としては「私は移民が嫌いだ」と意見表明することを挙げることができるでしょう。また暗黙のものとしては,ネガティブな言葉と移民との間に連合が見られる(処理スピードが速まるなど)ことを指します。また,「移民は頭がわるい」といったように露骨な表現を使うこともあれば,「移民は努力が足りない」といったように微妙な言い回しの中で偏見が示されることもあります。


偏見の弊害

偏見は,社会の中で深刻な問題を引き起こすことがあります。

偏見は人々の間の敵意を高め,協力への意欲を削ぐことから社会の成り立ちにとっても弊害をもたらします。また偏見を伴った見方を受けた個人は,身体的・精神的な健康にダメージを受けます。実際に,心血管疾患や死亡率,心的外傷後ストレス,物質乱用などの問題へとつながる可能性があります。

性格と偏見

どのようなパーソナリティ特性が,偏見に関連するのでしょうか。

ひとつの考え方としては,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの開放性が偏見に関連しやすいというものです。開放性は自由な思考や創造性,知的好奇心,保守的ではない政治的志向性に関連します。一口に「開放性」といっても,その内容は多様です。

白黒をはっきりさせるような思考スタイル,曖昧さに対する寛容性のなさ,権威主義的な傾向,変化を嫌う傾向,社会規範から逸脱することを嫌う……こうした特徴は,開放性の「低さ」に関連します。そして,こういった傾向は,特定の人々に対する偏見につながりそうです。

そこで,過去の研究を広く収集してレビューを試みた研究が行われました。開放性と偏見との間には,どのような関連が見られるのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Associations Between Openness Facets, Prejudice, and Tolerance: A Scoping Review With Meta-Analysis)。

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