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時代とともに曲の歌詞はシンプルになってきた

割引あり

皆さんは日々,どれくらい音楽を聴くでしょうか。また,どのように聴くことが多いですか?

特に最近は,音楽に対するショート動画の影響力が大きそうです。TikTokでもYoutubeでも,ショート動画で使われる楽曲が流行っていくパターンを目にします。すると,短くてキャッチーで「踊ってみた動画」で使うことができるような音楽が流行る時代になってきた印象なのですが,どうでしょうか。



歌詞

以前にもこんな話を書いたことがあるように思うのですが,音楽を聴くときに,歌詞を重視する人とあまり重視しない人がいるように思うのですよね。

歌詞は音楽の中でも重要な構成要素であることは間違いありません。しかし,日本語の歌詞の曲が海外で流行るような場合に,歌詞の意味内容を理解したり共感したりして流行るわけでもないでしょうし,重要だとはいえ,曲やリズムとは役割がずいぶん異なりそうです。

歌詞の内容

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したのは2016年のことですが,歌詞もまた時代と友に変化する社会の雰囲気や規範や感情や価値観などを反映するのは確かです。

このようなことから,音楽の歌詞を研究してそこから言語的特徴,時代の特徴,そして心理学的な特徴について考察を深めようとする研究も行われています。

時代変化

たとえば,1961年から2007年にかけて,歌詞の中に含まれる感情的な強さ(ポジティブさやネガティブさの極端さ)が少なくなってきているという研究結果が報告されています。また,1951年から2016年にかけての6150曲を分析した研究では,歌詞の中の肯定的感情(喜びや自信など)が減少し,否定的感情(怒りは嫌悪や悲しみなど)が増加傾向にあるという結果が報告されています。

さらに,1965んから2015年までの楽曲の歌詞について検討した研究によると,ひとつにはネガティブな感情を含む歌詞の方がヒットチャートで上位になりやすいこと,もうひとつは文化的なバイアス(売れた曲の歌詞が別の曲に影響すること)が考えられるとのことです。

また,1980年から2007年の年末の全米ホット100チャートで最も人気のあった10曲の歌詞を調査した研究によると,次のような内容の歌詞が時代とともに変化しているという結果も報告されています。

増加傾向にある歌詞

◎自分自身に関連する言葉(例:私や私の)
◎反社会的行動を指し示す言葉(例:憎む、殺す)

減少傾向にある歌詞

◎社会的相互作用に関連する言葉(例:話す、仲間)
◎ポジティブな感情(例:好き、いいね)


研究しやすさ

さて,近年では歌詞のデータベースも充実しています。歌詞を提供するサービスも増えていて,歌詞の研究をすることが以前よりもやりやすくなっているのは確かではないでしょうか。

そこで,過去50年間にわたるポピュラー音楽のダイキの場データセットを用いて,歌詞の複雑さ,感情,人気度などについて検討した研究を見てみましょう。こちらの論文です(Song lyrics have become simpler and more repetitive over the last five decades)。

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