性格の明るい面と暗い面
「いい性格,悪い性格はあるのですか?」という質問は,パーソナリティ心理学の授業をしていると,授業の最初のほうの回で昔からよくみられる質問のひとつです。
私が学生だった頃も,直接的に授業の中で学んだのか,それとも何かの文献で学んだのか,それともなんとなくそういうものだとさまざまなまものを見ながら感じていたのか……性格のような人間の個人差特性そのものに「良し悪し」というものはなく,良し悪しは「結果」にすぎない,という考え方を身につけてきました。
ポジティブ心理学
1990年代から2000年代にかけて,ポジティブ心理学という研究領域が一気に広まりました。Wikipediaにも書いてあるのですが,ポジティブ心理学というのは,「個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する心理学の一分野」だとされます。
ポジティブ心理学の中でどんな研究が行われているかというと……ウェルビーイング(well-being)や幸福感,楽観性,フロー,希望,などなど,私たちが生活する中で「備えていたら人生がよくなりそう」な心理特性たちです。そしてポジティブ心理学では,本当の意味での幸福やよい人生を生み出すためには,人格的な強さ(強み, character strength)や美徳(virtue)が必要だということも協調されます。
ダークな性格とポジティブな性格
「ポジティブな方向の特性があるなら,悪い方向の特性を研究してもいいじゃないか」と,まるでそのように考えたかのような研究が,ダーク・トライアドの研究のようにも思えます。発端となった研究のひとつは2002年に発表されています。近年では,ダーク・トライアド(マキャベリアニズム,ナルシシズム,サイコパシー)にサディズムを加えて,ダーク・テトラドの研究も増えています。
さらにさらに,近年ではダーク・トライアドの対極の特性としてライト・トライアドの研究というものもあります。内容は,ヒューマニズム(個々人の尊厳と価値を信じること),カント主義(人を手段ではなく人間として扱うこと),人間性への信頼(人間の基本的な善を信じること)というものです。ここでの「ライト」はlightですが,内容はなかなか哲学的ですね。ダーク・トライアドが「悪」というのに対し,「正義」「正しさ」といったニュアンスが感じられます。
ブライトな性格とビッグ・ファイブ・パーソナリティ
ダークの反対の意味には,もう少し違う「明るい」という意味も位置します。というわけで,今回紹介する研究では「ブライト・トライアド」(bright triad)について検討しています。先ほどのライト・トライアドよりも,もっと広いパーソナリティ特性としての意味合いの中でブライトな側面を探そうという試みです。
特にビッグ・ファイブ・パーソナリティの中で,ダーク・トライアドの対極にあるブライト・サイドが何になるかを検討する試みです。こちらの論文を見てみましょう(The bright side of personality)。
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