畏怖の心と向社会的行動
人々と分かち合うこと,協力すること,助け合うこと,寄付をすることなど,他者や社会全体にとって利益をもたらし,社会全体にプラスの効果をもたらすような行動のことを,向社会的行動といいます。向社会的行動は,対人関係の調和を向上し,社会の安定の基礎をつくる行為でもあります。
畏怖
私たちは,特定の場面で畏怖心や畏敬の念を抱きます。畏怖のプロトタイプ理論(Prototype Theory of Awe)というものがあるそうなのですが,この考え方では,畏怖が特定の典型的な特徴やプロトタイプを持つ感情だとされます。たとえば私たちは,理解の範囲を超えるような壮大な物事に直面したときに,畏怖心を抱きます。
そして,畏怖の念を抱くことは,向社会的行動を誘発する可能性があるようです。これは,ビデオを見せたり読書をさせたりして畏敬の念を抱かせる実験的研究でも示されていますし,日常で畏怖心を抱く傾向があるかどうかを質問紙で検討した研究でも示されています。
ただし,関連はそれほど安定しているわけでもなさそうです。
関連
もしかしたら,畏怖心と向社会的行動が結び付きやすい条件や,結び付きにくい条件があるのかもしれません。たとえば年齢です。大学生の研究では,オフの感情を誘発すると向社会的行動を示す傾向が安定して報告されているようです。しかし,この点もまだ不明瞭なところがあります。
このようなときに頼りになるのが,メタ分析です。畏怖心を抱く傾向と,向社会的行動との間には,どれくらいの関連があるのでしょうか。また,異不信と向社会的行動との間の関連が生じやすい条件と生じにくい条件には何があるのでしょうか。これまでの研究をまとめたメタ分析を行った研究があります。こちらの論文を見てみましょう(A meta-analysis examining the relationship between awe and prosocial behavior)。
ここから先は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?