
ナルシストは自分が賢いと信じている
自分自身について誇大で「すばらしい」という認識をもつ自己愛的な人物(ナルシシスト)は,きっと自分のことを「賢い」と考えるのではないでしょうか。
そう考えるのは,それほど突飛なことではないですよね。
エージェンシー
コミュニオンとエージェンシーという対比は,心理学でもよく用いられます。コミュニオンは共同性と訳されることがあるのですが,他の人々の方向を向き,協調的で,親切さや親密さを表す志向性です。それに対してエージェンシーは作動性と訳されることもあり,達成や能力,他者から離れて自分自身で物事を進める独自の存在であろうとする志向性を表します。
そして,ナルシシズムはこのエージェンシーを求める傾向があると考えられています。これを,エージェンシー・モデルと言います。とてもシンプルな考え方なのですが,このモデルから考えると,ナルシシズムが内的な能力である自分自身の知性や知能を高く見積もる可能性があることが想像されます。知能は,高ければ「誇らしい」,低いのは「イヤだ」という,自分自身の評価に直結しやすい特性のひとつです。
ナルシシストは自分の知性をどう考えるか
自己愛的な傾向の高い人々が,自分自身の知的な能力についてどのように考える傾向があるのかを検討した研究があります。この論文を見てみましょう(What do highly narcissistic people think and feel about (their) intelligence?)。
「自分は知的にすぐれた人間である」と考えることは,必ずしも悪いこととは言えません。そのような自己評価はポジティブな自己認識にもつながって,よい結果をもたらす可能性もあります。
自分自身について誇大な感覚を維持しようとする自己愛的な人物にとって,「自分が賢い」と言えるような状態を維持することは重要です。おそらくこのような人物にとって,自分の能力が低いということに直面することはとてもイヤなことであろうからです。きっと,自己愛的な人たちは,自分自身の知性をとても重要な要素だと捉えていることでしょう。
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