
パーソナリティ障害はどれくらい遺伝するもの?
ある心理特性がどれくらい遺伝の影響を受けるのか,また環境の影響を受けるのかという研究は,ふたごを対象とした研究や養子の研究で検討されてきました。
そして,おおよそどんなパーソナリティ特性であっても,おしなべて考えるとその個人差に対する遺伝の影響力は0.4から0.5くらいとされることが多いと言えます。もちろん,このあたりの数値は研究によっても幅があって,パーソナリティ特性の種類によっても変わってきます。0.3くらいと報告されることもあれば,0.7くらいだと報告されることもあります。
いずれにしても重要なのは,遺伝だけで100%説明されることもなければ,環境だけで100%説明されることもない,というところではないでしょうか。
遺伝とはいえ
ひとつ重要なことは,遺伝率というのは「親から子にその心理特性がそのまま遺伝する率ではない」という点です。親から子に直接その特性がどれくらい伝わるのかは,親子でその特性の相関を検討すればよいのです。
しかし,たとえ「遺伝率が8割」であったとしても,親の特性から子どもの特性が「8割推定できる」という状態からは程遠い状態です。
共有環境
またこういった研究では,環境を2種類に分けて考えます。
◎共有環境:ふたごを互いに類似させる方向に影響する環境の効果。主に家庭内環境だとされる。
◎非共有環境:ふたごを互いに類似させない方向に影響する環境の効果。主に家庭外環境だとされる。
そして,おおよそパーソナリティ特性についてこれらの環境の影響力を推定すると,「およそゼロ」だと推定されることが非常に多いのです。もちろんこの推定の仕方に問題がないわけではないのですが(たとえば非共有環境の影響力は誤差と区別がつかない,など),共有環境の小ささについては,それが何を意味するのかを理解するとともに,要注意の点でもあります。
パーソナリティ障害の遺伝率
「クラスターB」と呼ばれるパーソナリティ障害のグループがあります。
◎境界性パーソナリティ障害:対人関係や自己像の不安定さ,過敏さ
◎反社会性パーソナリティ障害:他者の権利や行為の結果を軽視する
◎演技性パーソナリティ障害:過度にほかの人の注意をひこうとする
◎自己愛性パーソナリティ障害:自己の誇大な感覚と称賛への欲求
これらのパーソナリティ障害の傾向の個人差において,どれくらい遺伝や環境で説明できるのかを検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(The heritability of Cluster B personality disorders assessed both by personal interview and questionnaire)。
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