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アインシュタインのIQはいくつですか

歴史上の著名人のIQリストを見たことはあるでしょうか。

ダビンチ IQ = 220
ゲーテ IQ = 215
シェークスピア IQ = 210
アインシュタイン IQ = 205
ニュートン IQ = 195

こういうリストです。
このリストがどうやってできたかは知っているでしょうか。
今回は,このリストの成り立ちの謎に迫ってみたいと思います。

なお,非実在の登場人物ではIQがどのように描かれているかと,その値は実現可能なのかについては,以下の記事(江戸川コナンの知能指数)に書きました。

また,世の中で言われる精神年齢と本来の意味の精神年齢のズレについてはこの記事で書きました(精神年齢の謎)。

今回は知能指数の記事の続きで,実在する歴史上の人物の知能指数の成立過程に注目したいと思います。

知能指数は知能検査で

当たり前のことですが,基本的に知能指数は知能検査を受けないとわかりません。
知能検査を使うことによって,さまざまな認知的な課題を行って得点をつけ,精神年齢と実年齢あるいは得点分布から知能指数を換算することができます。

WAISの問題はこんな感じ,というまとめがありましたので,イメージをつかむために見てもらうと良いかもしれません。

いつから成人のIQが測定できるのか

知能指数(IQ)が結果の表記に用いられる知能検査は,ターマンによるスタンフォード・ビネー検査からです。これは1916年のことです。しかしこの検査は,成人を対象にすることができませんでした。なぜならIQの算出に精神年齢と暦年齢を使っていたからです(なぜ算出できないかはこちらの記事を参照)。

成人のIQが測定できるようになったのは,ウェクスラーによるウェクスラー・ベルビュー知能尺度(Wechsler-Bellevue Intelligence Scale)ができてからです。これが1939年のことです。そしてこの検査を改良した,現在も版を重ねながら使われているウェクスラー成人知能検査(WAIS)ができたのは1955年のことです。これ以前に成人に対して知能検査を行い,IQを測定することはできなかったと考えた方が良いでしょう。

アインシュタインは1879年3月14日生まれ,1955年4月18日に亡くなっています。スタンフォード・ビネー検査ができたときにはすでに成人ですし,WAISができた年に亡くなっています。知能検査を受けたとは考えにくいですね。

歴史上の有名人の評価方法

アメリカの心理学者キャサリン・コックス(Catharine Morris Cox; 1890 – 1984)は,Genetic Studies of Genius IIという著書の中で,歴史上の人物のIQを推定する試みを行っています。

コックスの興味は,「天才と言われる人々は若いころにどのような生活史をたどるのか」というところにありました。

1450年から1850年の間に生きていた301名が評価の対象です。選び出した人物には,政治家,哲学者,科学者,作家,宗教指導者,芸術家,音楽家などが含まれていました。

17歳までの児童期,思春期のころのエピソードと,成人期の最初の時期のエピソードを対象に知能指数の評定が行われました。当時はまだウェクスラー式の,正規分布に基づく知能指数(偏差知能指数)が開発されていません。そこで,幼いころから思春期頃までのエピソードと,成人になって最初のころに何をしたかというエピソードを集めることによって,通常の人々に対してどの程度優れたエピソードを残していたかを評価したのです。

誰が高い知能と評価されたか

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