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「ぜんぜん勉強してないよ」というセリフ

中学生や高校生のときの試験当日,こういう会話をしませんでしたか?

「今日のテストの勉強やった?」
「だめ。ぜんぜんやってないよ。昨日ネットで動画見ちゃってさー」

ところがたいてい,この「ぜんぜんやっていないよ」のセリフを言った生徒はちゃんと勉強をしていて,結構良い成績をとったりするのです。

きっと,ちゃんと勉強してきていると思うのに,どうして「やってないよ」と言ってしまうのでしょうか。

目次

・自己奉仕バイアス
・嫌なやつ
・落ち込んだ時は
・セルフハンディキャッピング

自己奉仕バイアス

「ぜんぜんやってないよ」の話しに行く前に,バイアスの話をしようと思います。バイアスとは,特定の傾向や偏りを表します。

こういう人はいませんか?

自分が成功すると「俺って頭がいい!」とか「頑張ったからな!」と言うのに対し,自分が失敗すると「今回の課題は難しすぎたからな…」と言う人です。

◎自分の成功は内的な要因に原因帰属
◎自分の失敗は外的な要因に原因帰属

このような原因帰属の仕方のことを,自己奉仕バイアスと言います。自分自身で「これが原因だよな」と言うこともあれば,周囲の人たちにこのような原因を主張することもあります。

何のためにこういうことをするのかというと,自分の評価を上げようとしたり下げないようにするため,また周囲の人からよく見られようとするためです。

嫌なやつ

でもこういう人って,あまり望ましい人ではないように思いますよね。

「うまくいったら自分の手柄」「失敗したら周りのせい」という人です。あからさまにそんなことを言う人がいたら,ちょっとあまり親しくなりたくないと思ってしまいそうです。

落ち込んだ時は

でも,そのように考えることは,時には良いこともあるのです。

たいてい落ち込んでいる時というのは「自分が全て悪い」と思いがちなのです。それって,自己奉仕バイアスとは逆ですよね。

「自分のせいじゃない」と思うことは,精神的な安定をもたらしてくれる考え方でもあるのです。

ですから,あからさまにそれを周りに主張するのでなければ,自分の精神的安定を保つために,たまにはそうするのもいいんじゃないの?と思うことはあります。まあ,ものは考えようです。

セルフハンディキャッピング

これは,自分が何かで評価されようとしている場面でおきがちなことです。自分が高い評価を受けるかどうか確信が持てない時がありますよね。そういうときに,自分がそのものごとをうまくできないハンディキャップを持っているのだということを周囲に主張したり,自分でハンディキャップを作り出してしまったりすることをセルフハンディキャッピングといいます。

冒頭の「ぜんぜん勉強してないよー」というのが,まさにこの例です。

どうして課題に取り組んだり結果が出る前に,こんなことを言ってしまうのでしょうか。それは,成功しても失敗しても,結果的に自分を守ることになるからです。

◎成功したら......ハンディキャップがあるのに成功した
 →自己評価が上がる
◎失敗したら......ハンディキャップがあるのだから失敗してもおかしくない
 →自己評価の低下を防止

面白いのは、言っている本人は自己評価低下の防止を意識しているとは限らない点です。たいてい,意図せずそういうことをしてしまっているのです。ちなみに私自身も,中高生の時はよく言っていました......。

ただ,そういうことを口に出しているだけで,本当はちゃんと課題に取り組んでいれば良いのです。問題になるのは,本当に他のことをして課題に取り組まなくなってしまった時です。「勉強していないんだよね」と言いつつ,本当にしなくなると要注意です。

気をつけましょう......。


『大学生のセルフ・ハンディキャッピングの2次元』

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