
「3」「5」「7」が好まれるのは日本の特徴?
日本人にとって,なじみの深い数字というのはあるのでしょうか。俳句も「5」「7」「5」ですし,子どものお祝いも「7」「5」「3」と奇数です。そして,重要な場面でもこの数字が特に根拠なく用いられているのではないか,という疑惑もあります。
そういえば,高校時代に「七五三一」という名前の先生がいたことを思い出しました。苗字ではなく,下の名前です。どう読むかわかりますか?
ビジネス場面
この本(『ビジネス・フレームワークの落とし穴 』)にも,そんな話が載っていました。投資の回収でこの数字が使われるという話です。
こういう一節です。投資の回収の話をする時に,なぜか3,5,7という数字が使われるのですが,特に根拠がないのではという指摘です。
投資の回収に関しては,「3年で単黒,5年で累損一掃」という計画がとても多い。「4年で単黒,8年で累積一掃」という計画には,ほとんど出会ったことがない。
これは会社の投資回収基準として,「3年で単黒,5年で累損一掃」,設備投資額の大きい事業では「5年で単黒,7年で累損一掃」というルールがあるため,それに合うように数字をはじき出している可能性が少なくない。そうでなければ,事業計画の多くが3年,5年,7年に収斂するのは,あまりにも偶然すぎる。3,5,7という数字は,日本人にもなじみの深い数字であり(子供の七五三がまさにそれであり,俳句や短歌も五,七で作られている),かつ3年という数字は,意思決定する役員が,「自分の在任中」という感覚で決定しやすい。
提案時に示された回収期間が,本当にその通り実現したかは,あまりレビューされていないので,実態は不明であるが,今日もどこかの会社で「3年で単黒,5年で累損一掃」という投資計画が作られているに違いない。(p.164)
これ,ビジネスの場面だけではないのですよね。たとえば大学の認証評価も「7年ごと」ですし,研究経費に関連する期間も「5年まで」という設定が多いような印象があります。
この本に書かれているように,何か根拠があってそうなっているわけでもない「3」「5」「7」が多いように思うのですが,どうでしょうか。そこに何か数字に対する好みのようなものがあるのでしょうか。あるいは,指の数からくる数えやすさのようなものも影響しているのでしょうか。
ODD
奇数を英語でodd numberと言います。「odd」は半端なとかあまりとかの意味もあるのですが,「奇妙な」「風変わりな」という意味もあります。そして,どうも海外では「7を除いて奇数はあまり好まれない」という調査結果があるとか。これについては「odd」という単語のせいではないかと想像してしまいます。そして「ラッキーセブン」だけは除かれるということでしょうか。
その昔,奇数は魔女裁判でもよく登場したという話を聞いたこともあります。「3人を不幸にした」「5人を病気にした」「7人を殺した」など,奇数の不幸な出来事が魔女であることの根拠にされたとか。
日本の好み
では日本ではどうなのでしょうか。ずいぶん昔の論文なのですが,数字の好みを尋ねた研究を見つけました(もっと最近の研究もあるかもしれませんが……)。「官能検査における心理的効果の透明化に関する研究」という論文です。
この中の「その3」で,記号に対する好みの調査がおこなわれています。この結論が,なかなか面白いと思ったのでした。
◎1か ら10ま での数字の好みの順は,最も好まれる数字からならべると5,3,1,7と2,8,6,10,9,4の とおりである。
日本では,9を除いて奇数が偶数よりも好まれるという結果が示されています。
このあたりの「何となくの好み」とかそういう何となくの好みの文化差というは,なかなか面白い現象ですよね。
名前の正解は
高校時代の先生の名前は,「七五三一」と書いて「しめいち」と読みました。
神社にある「しめ縄」も,いくつかの書き方があるのですが,「七五三縄」と書く時もあります。
この教えてもらっていた先生ですが,研究して数学の定理を発表しています。私が高校生の頃から,自分の名前がついた定理を発表していたことは知っていたのですが,本を出版していたのは知りませんでした。教員退職後も,研究を続けていたようです。見習いたいですね。
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